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#49 セブンミニッツ ミラクル

 現在はコロナ渦のため、海外から来日する方は極端に少ないですが、海外からの観光客が、熱い視線を送る光景が、JR 東日本の東京駅ホームで毎日展開されていることをみなさんはご存知でしょうか?
 JR 東日本の新幹線3 系統、200 本前後が発車するホームは、19 番線から22 番線の4 本のホームです。一方、ほぼ同数の新幹線が発車するJR 東海のホームは6 本あります。つまり、JR 東日本の新幹線ホームは、JR 東海のホームの1.5 倍、発車本数が多いのです。
 それは、長距離高速鉄道にとって他国の追随を許さない奇跡的な事実だと言われています。
 しかしこの奇跡を可能にしているは、実はハイテクの新幹線システムではありません。日本人の手によるものだということが、世界中の人々を感動させているのです。東京駅到着から車輌の清掃、そして再び発車するまでわずか 12 分しか要しない手際のよさです。到着してから乗客の降車まで2 分、車内清掃に7 分、そして乗客の乗車に3 分。合計12 分で新幹線は発車していくそうです。何より見事なのは、このうちの7 分間の掃除です。その迅速で統率の取れた作業。一列に並んで礼をし、入線してくる新幹線を迎える姿。そして掃除が終わると、並んでいる人々に一斉に礼をして規則正しく去っていくその姿に、魅せられる海外の観光客が多いのです。
 いつしか、その清掃の光景は、「セブンミニッツミラクル(7 分間の奇跡)」と海外で称されるようになりました。米国ではCNNニュース等でも取り上げられ、日本の強み、社会の安定性の象徴として報じられてました。またアメリカのハーバード大学院でこの新幹線の社内清掃が必須科目として取り上げられるようになったそうです。
 日本の新幹線システムの視察に来日したフランスの鉄道大臣は、

「新幹線のシステムもほしいが、あの清掃チームの人々こそ持って帰りたい

と語ったと言われています。その世界を魅了している清掃チームは、「テッセイ」と言います。正式には、JR東日本テクノハーツという会社に属している、チームです。わずか7分間で、総座席数約1000 席を22名のチームで仕上げます。トイレ、洗面所、ゴミ箱 そして座席まわりにテーブル。その素早さと完璧さは、まるでひとつの演劇を観ているようだと言われています。

 事実、テッセイのメンバーは、自分たちの仕事場を「新幹線劇場」と呼んでいるそうです。そして、こうも語り合っています。

自分たちの仕事は掃除ではない。旅する人によい思い出を持ち帰っていただくことだ」と。

 入線する新幹線を黙礼で迎える姿。ホームで乗車を待つ人々に一列になって礼をする姿。そして出発する新幹線に頭を下げて見送る姿には、何か胸に迫る感動を覚えるそうです。その感動は万国に共通するという事実もまた、私たち日本人の胸を捕えます。道具を大切にする、仕事の場を清々しく大切にする、受け継いだ伝統を尊重し、大切にする。鉄道車輌を礼で迎えるまさしくその姿に、海外の人たちは「日本の本質」を見てカメラを向けるのだと思います。
 わずか7分間で清掃可能にしているのは、テッセイの素晴らしいスタッフの活躍ばかりではないと私は思います。車内で自分が飲んだ缶ビールや弁当の空き箱は自ら捨てようとする人々が乗る日本の鉄道だから可能なのです。自分の座っていた座席の背もたれを戻して下車しようとする国民性だから、たった4 本のホームで1 日200 本の新幹線の発車を、可能にしているのです。
 そんな日本人の国民性そのものが、安全で快適な今の日本を創った大きな無形の社会資本であり、今後もそれを継承していけるような子どもたちを育てているのが、日本の学校教育だと私は思います。自分の使うものを大切にする、身の回りをきれいに整頓する、みんなの意見を尊重する、授業を礼で始め、礼で終わるなど教室で当たり前のように行われていることが、実は日本の強みになっていることを我々は忘れてはいけないと思います。

 そう考えると、先生方、あなたが教室で子どもたちに指導しているいろいろなことは一つ一つとても意味のあることだと思いませんか。テストでよい点を取ることよりもはるかに意味のあることを実は子どもたちに教育しているのが学校なのです。

 今度東京駅のホームに行ったら是非清掃員の皆さんに注目してみてください。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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