(英文会計)会計監査人の意見書(2)
ソニーグループが米国証券取引委員会(SEC)に提出した、2022年度の年次報告書(Form 20-F)の財務諸表を見ています。今回は、会計監査人の意見書(Report of Independent Registered Public Accounting Firm)の第2回目です。
https://www.sony.com/en/SonyInfo/IR/library/FY2022_20F_PDF.pdf
の120ページ(F-2ページ)です。
内部統制についての意見
前回、「財務諸表についての監査意見を書いてあるところが一番大事」ということで、「Opinions on the Financial Statements and Internal Control over Financial Reporting」の第2段落目の最初の部分に着目しました。続きを見ていきましょう。
ここでは、監査法人として、会社が有効な内部統制を敷いていることを表明しています。内部統制(internal control)とは、社内で業務の適切なルールや仕組みを構築することですが、そのあり方を示したのがCOSOの「内部統制の統合的フレームワーク」です。
詳しく知りたい場合には、以下をご覧ください。
具体的には、まず、SOX法(Sarbanes-Oxley Act)404 (a) で、経営者が、財務報告に対する内部統制の責任とそれらの運用の有効性を年次評価し、報告する必要があります。また、SOX法404 (b)で、監査法人から、財務報告に対する内部統制監査を受ける必要があります。
これに加えて、SOX法302および906で、経営者が財務報告の適正性について宣誓する必要があります。
PDF版にはありませんが、EDGARで見ると、別紙(exhibit)の12.1と12.2として、ソニーグループのChairman and CEOとPresident, COO and CFOのSOX302の宣誓書(certification)が添付されていることが分かります。
また、Exhibit 13.1として、SOX906の宣誓書が添付されていることが分かります。
私は、Form 20-Fの原稿を印刷会社に送って、フォーマットの変換結果を確認する仕事もしていたのですが、最後、これでSECに提出する(EDGAR filingという)というときに、宣誓書一式を紙で印刷したものをCFOに持って行き、サインをもらっていました。「本当に大丈夫だろうな、君のせいで僕は牢屋行きになるかもしれないぞ」と言われたのを覚えています(もちろんご自分の責任を認識されたうえでの冗談です)。
前回、財務諸表の適正意見をもらうのは大変、という話をしましたが、それに加えて内部統制についても適正意見をもらわなくてはいけないので、米国上場は本当に大変だと思います。どちらも米国に限ったことではないでしょうが、全部英語ですし。
まとめ
財務諸表についての監査意見だけではなく、内部統制(internal control)についての意見も監査法人にもらわなくてはいけない。
内部統制の有効性の基準は、COSO(トレッドウェイ委員会組織委員会)により発出された「内部統制の統合的フレームワーク(2013)」(Internal Control — Integrated Framework (2013))が参照される。
具体的には、SOX法(Sarbanes-Oxley Act)404 (a) で、経営者が、財務報告に対する内部統制の責任とそれらの運用の有効性を年次評価し、報告する必要がある。また、SOX法404 (b)で、監査法人から、財務報告に対する内部統制監査を受ける必要がある。
SOX法302および906で、財務報告の適正性を経営者が宣誓する必要がある。Form 20-Fでは、別紙(exhibit)として宣誓書(certification)を添付する。
次回は、もう少し監査法人の意見書を見ていきます。
参考:KPMGジャパン「日本企業の米国Nasdaq上場」(https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/jp/images/2023/07-12/jp-global-listing-nasdaq-2023.pdf)
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