カトリック教会とジャニーズ事務所、性虐待の共通点
大手芸能プロダクション「ジャニーズ事務所」に所属するタレントに対して長年行ってきたとされる創業者の性虐待。元ジャニーズJr.の海外メディアへの告白がきっかけとなり注目を集めるようになった訳だが、組織ぐるみの隠蔽や、日本メディアのジャニーズ事務所への忖度など、性虐待問題を途端に業界の闇が少しずつ明らかになっている。
性虐待問題はカトリック教会においても世界的な問題となっている。教会内の性的虐待は、後述するような事情により長きに渡って隠蔽されていた。しかし21世紀に入り米国メディアによって大々的に取り上げられたことをきっかけに、その一部始終が明るみになると、世界中の教会で性虐待が行われていた事実が判明、多くの報道がなされることとなった。そして、一部は訴訟にまで発展し、結果、性虐待を行っていたとされる数多くの聖職者や修道士が教会から解任、ローマ法王ベネディクト16世(当時)が性被害者に対して謝罪をするという前代未聞の出来事となった
さて、ジャニーズの性虐待とカトリック教会の性虐待は、異なる背景や文脈で起こった問題ではあるものの、いくつかの共通点も見出すことができる。
まず、どちらの問題も、権力関係や信頼関係の不均衡が性的虐待や性的加害の土壌となるという点である。カトリック教会の性虐待では、信者と聖職者の間に存在する教会の権威や信仰に対する信頼が、被害者を守る仕組みの不足に繋がった。同様に、ジャニーズの性虐待では、事務所とタレントの間のパワーバランスや、ファンやメディアからのジャニーズへの絶対的な信頼が、被害者を守るメカニズムの欠如になったのではないかと推察される。
また、両方の問題では、被害者の声が長い間無視されたり、隠蔽されたりするという共通点もある。カトリック教会では、性虐待の事実が、長い間告発、報告されずに上層部で揉み消されたり、虐待の舞台が孤児院や学校といった、加害者と被害者が共同生活を送るような施設で行われていたことから、被害者が声を上げることが困難な状況であったことが明らかになっている。ジャニーズの場合も、性加害被害者が自らの声を上げにくい環境に追い込まれていたり、事務所や関係者によって問題が隠蔽されていたのではないかと指摘されている。
もちろん、これらの問題は異なる組織や文化の中で起こったものであり、直接的な関連性はない。それぞれの問題は、独自の要因や背景を持つものであり、個別対策が必要となる。しかし、両方の性虐待の根本には、抗えないヒエラルキーや声無き声に耳を傾けることが出来ない状況など、社会の環境に起因するものが多い。我々はこうした性虐待に対し、他人事のように捉えず、自分事としてどう向き合うべきなのか、改めて考えていかなければならない
(text しづかまさのり)
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