#2 アイスブレイクは本題への橋渡し
ワークショップデザイナーの相内洋輔です。私はワークショップを面白いと思ってくださる方がもっと増えることを意図して、ワークショップデザインやファシリテーションのコツなどについてブログやラジオでお届けしています! ぜひワークショップ仲間が増えると嬉しいですっ。
先日はワークショップラジオで「アイスブレイクはメインパートへの橋渡し」というテーマについてお話しさせていただきました。この記事では、ラジオで話したことを要約してお伝えします。
オープニングトーク
私は昨日、山形の東北芸術工科大学に行ってきまして、幸福学の前野先生とコミュニティデザイン学科の矢部先生のお話を伺ってきました。会場には前期の講義で私がワークショップデザインを教えた学生たちも講義を聴講しに来ていまして、他の先生の授業で今ちょうどワークショップデザインが課題になっていることを教えてくれました。
どうしたらいいワークショップになるかな? とご相談いただいたので、久しぶりにお話をしたんですけれど、やっぱり学生の方々とお話すると元気をもらえるなぁということを改めて実感した1日でした。
ぜひたくさんワークショップをデザインして、素晴らしいワークショップデザイナーになってほしいですね!
さて、前回のラジオでは「アイスブレイク」についてお話をしたんですけれど、今回も引き続き話を深めていこうと思っています。
アイスブレイクは盛り上がるだけだともったいない
今日話したいことは、アイスブレイクをワークショップ本題への橋渡しとしてデザインできるとGood! ということです。
前回お伝えしたように、アイスブレイクって対話の場作りに参加してくださる方々の緊張感をほぐしたり、その場に集まってくださった方々の関係を紡ぐことを通じて、メインワークに集中して取り組めるような心身の状態を整える重要な役割を持っています。
ここで私がすごくもったいないなとよく思うのが、ワークショップの本題に全く関係ないアイスブレイクをして、ただただ盛り上がって終わっている方が結構多いんですよ。
これだとアイスブレイクと本題の間がぶつっと切れたままで、参加者の気持ちが本題と接続されにくいんです。
図にするとこんな感じです。アイスブレイクと本編が関連しているほうが、ワークショップの進行がスムーズなのですよね。
そういう私も、昔は盛り上がることを主題にしたアイスブレイクをデザインしていたのですが、独立し、組織開発や社会人向けのワークショップへ軸足をシフトしたことが大きな転機になりました。
そもそも大人に盛り上がっていただくのは難易度が高い
少し私自身のことをお話しすると、私は高校生とか大学生の若者に向けたワークショップを実施することが最初は多かったんです。なのでワイワイ盛り上がるアイスブレイクをたくさん集めてきたのです。
でも独立してからですね、社会人の方々に向けたワークショップをたくさん扱うようになりまして、その時に2つの不都合な出来事と直面するようになったんです。
まず1つ目ですが、そもそも社会人の方々にワイワイ盛り上がっていただくようなアイスブレイクってあんまり馴染まないんですよね。会社の会議室で歌って踊るような類のワークって、とてもじゃないですけれども、なかなかご提供できないじゃないですか。
隣の部屋から「猛獣狩りに行こうよ〜♪」みたいな掛け声が聞こえてきたらみんなビックリしちゃう(笑)
参加者が役員や経営者であれば尚更で、幼稚な印象を持たれかねません。
時間制限と成果への期待がシビアな中で
もう1つは、企業研修などでご提供するワークショップって2時間とか3時間といった形で、時間が限られていることが多いんですね。
かつ、その限られた時間の中で絶対に目的を達成しなければならないので、アイスブレイクの10分とか15分の時間も無駄にできないんです。
もちろん学生向けのワークショップも時間が限られているんですけれども、求められる成果は、組織開発や研修のワークショップの方がより一層シビアであることが多いように思います。
そのため独立当初は、アイスブレイクで何をご提供しようかな? って結構悩みました。なにせストックが「元気に盛り上がる」系ばっかりでしたから!
アイスブレイクはメインパートと関連性を持たせる
それからあれこれと試行錯誤を重ねてきまして、2023年現在は「アイスブレイクでは本編で扱うテーマに関連した対話」を行っていただくスタイルに落ち着いたんですね。
例えばSDGsを扱うワークショップを実施するとしたら、
「SDGsについて知っていること / 知らないこと」
「最近私が家の中で実践しているSDGs」
「近頃目撃したSDGsの取り組み」
などの対話のお題をお渡しして、まずはグループやペアで自由に語っていただくのです。
アイスブレイクとメインパートの導入を兼ねる具体例
私がよく使っているパターンはいくつかあるのですが、
「テーマにまつわる自分の体験」
「テーマを見た時に湧いてくる感情」
「テーマについて疑問に感じていること」
「テーマに関して知っていること、知らないこと」
「テーマに関する最近のニュースや、見聞きしたこと」
などはとても使い勝手が良い導入です。一見すると、アイスブレイクとしては少し地味な印象をお持ちになられるかもしれませんが、参加者がストレスなく話せるお題にして、自分自身の考えや興味関心を持ち出していただくことと、自己紹介・チェックインの時間を組み合わせるだけでも、参加者の緊張感って結構ほぐれるんですよね。
お互いの人となりや考え方なども、ただ盛り上がるアイスブレイクよりもよく見えてきたりします。
この時のポイントは、参加者自身に近いトピックスにすること。あまり悩まずに話せるお題が重要です。というのも、いきなり参加者から距離が遠い話題にしてしまうと、自分の考えや気持ちをうまく持ち出すことができず、アイスブレイクとして機能しません。
「SDGsについて日々あなたが感じていること」は参加者自身に近いですが、「SDGsの成功事例・失敗事例について知っていること」だと遠すぎる感覚です。(参加者の大半がSDGsに詳しい人々なら別ですが)
メインパートと参加者の心の距離を近づける
ただ盛り上がるだけの、本題と全く関係ないアイスブレイクだと、心身の興奮度合いは高まるのですが、ワークショップの本題と参加者の距離感は全然縮まっていないままです。
この状態だと対話へのレディネスが整っていないので、本題に入った際、質の高い対話が生まれません。そのため、対話を深めていくための小さなステップを設計する必要が生まれ、時間がかかってしまいます。
限られた時間のワークショップでは、この10分、20分のロスがものすごく痛手になります。
なので私は、アイスブレイクはメインパートへの橋渡しにする、を徹底しているんですよね。上記でご紹介したように、ワークショップの本題に入っていく第一歩目をアイスブレイクのパートで兼ねることができると、ワークショップに一本芯が通って、自然と対話が深くなるのです。
そして時間も省略することができるので、これらの相互作用で濃いワークショップをご提供できる確率がぐっと高まります。
まとめ
前回もお話ししたんですけれども、アイスブレイクって過度に盛り上げようとする必要は全くなくて、この場にいても安心だなとか、ちょっと今日のテーマに対して興味湧いてきたなっ、ていうふうに参加者が思えれば十分グッドなんですね。
そのうえで。
アイスブレイクはワークショップ本題への導入、という意識で、ぜひメインのテーマと関連性を持たせてもらえると、ワークショップの進行に連続性、一貫性が生まれて、すごく対話が深まるワークショップをご提供しやすくなると思います。一気通貫のワークショップデザインです!
これは参考になるな、と思った方がいらしたら、ぜひ試してみてください。ぜひ一緒に、面白いワークショップ、面白い対話を増やしていきましょう〜。
ワークショップデザイナー
相内 洋輔
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