走り出したにいがた2㎞シェアサイクル事業と照子さんの思い
2022年9月1日よりスタートした「にいがた2㎞シェアサイクル」。
今回は、この事業がなぜ行政と民間で手を組んで運営していくことになったのか、新潟市議会議員の小野照子さんにお話を聞きました。
放置自転車問題に取り組んで気づいた自転車の可能性
―どうして「にいがた2kmシェアサイクル」新規事業が始まったんですか?
きっかけは市が抱える問題のひとつ、放置自転車について調べてみたことです。
新潟駅の駅南の駐輪場では、放置自転車を定期的に確認、撤去しています。職員の人件費に燃料費用削減のためにも、所管担当の土木課や市民の方の声をききに行きました。
まず向かったのは上古町の「百貨さかい」さん。酒井さんから放置自転車対応経費への疑問を投げかけられました。保管期間をもっと短縮すれば、今より予算少なくて済むのではないかというご意見でした。すぐに土木課に現状をききに行きました。過去5年間(H27~H31)で撤去台数は半数まで減っていて、再生率は1.5倍ほど上昇しており、新潟市では大阪などと比べれば大きな問題にはなっていないとのことでした。
また、その自転車等の保管に要する費用の額が、当該自転車等の価値に比して高額にはなっていないことも分かりました。
酒井さんに報告に行った際、「放置自転車を活用して事業化してる人もいるよ」と教えてもらいました。
それで、本町5番町にある「にいがたレンタサイクル」の高橋正良さんにたどりついたんです。
訪ねてみると、高橋さんは自転車が大好きな方でした。お店ではすでに、新潟市が回収した放置自転車の中から、状態の良いものを自転車商組合で再整備して、レンタサイクル事業として活用されていたんです。
そして高橋さんと話す中で、新潟市と自転車の可能性が見えてきました。
高橋さんが3年ほど前にとったレンタサイクルのデータでは、8割が観光に使われており、「市民だけじゃなく観光客も使えるよう、自転車の整備を手厚くやっていった方が新潟市のためになる」と考えるようになった話をしてくださったんです。
そして、高橋さんのすごいところは行動力!仲間と一緒にドコモのシェアバイクを10台自腹で購入し、社会実験としてシェアバイクを設置しました。
―それが、シェアサイクル事業のはしりだったんですね。
新潟市も、ゼロカーボンシティや、車社会から脱却したウォーカブルなまち、多様な交通手段を目指すことをうたっています。自転車を利用しやすい環境を整えていくことが、市民の皆さんや観光客にとってすごく大事だなと私も共感したんです。
「照子と走る!にいがたシェアバイクの旅」で実感したこと
―シェアサイクル事業は、市民の方が気づいた新潟市のためになる視点から生まれたんですね。
そうなんです!私も話を聞いて「とにかく協力したい!」という思いで走りだしました。まず、高橋さんのドコモバイクを試すため、勉強会を兼ねたサイクリングをしようと市議会議員同期1年生に声をかけました。
利用してみると、電動自転車は楽チンで、とても楽しかったです。新潟島が地元の先輩議員が同行してくれて「ここは豆腐アイスクリームが美味しいよ」など回るルートを考えて下さり、より楽しくサイクリングできました。
その後も「照子と走る!」を企画し、新潟市歴史博物館みなとぴあ集合でおやつを食べつつまわりながら、お昼を一緒に食べて解散というスケジュールでサイクリングしてきました。
10月には「ニイガタ2kmガチャラリー」というイベントもあったので、会場を3ヶ所まわりましたね。参加してみて、目的や目標があると、やはり回りやすいということも実感しました。
実は今一般社団法人にいがたレンタサイクルが、観光促進のために、新たな食や文化と紐付けたWEBを作成していて、アプリのリニューアルを図っています。今年の4月以降、まち歩きや循環バスと併せてシェアサイクル、レンタサイクルで観光が楽しめる仕組みが出来るそうです。自由にコースを選べて、景色の違いも楽しめる、観光都市新潟市への進化にわくわくしています!
第二弾「照子と走る」では、ある女性がマイバイクで参加されました。普通の自転車でも、海に向かう坂道以外の街中は自転車でとても走りやすかったんです。
よくよく聞くと、新潟島のサイクリングコースは、高橋さんが仲間と一緒に新潟島を走る中で気づいた不具合のある場所を役所の方と一緒に100ヶ所以上てこ入れしながら整備されてきたのだそう。そのお話にも胸をうたれました。
参加者からは知らなかった道や気づかなかった景色に出会う、初めての発見があったことや、五感をフルに使えてすごく楽しめたという声も多くいただきました。イベント後、ほぼ毎日のようにシェアバイクを利用してくださっている方もいるという嬉しい報告もありました。
あと、企画して気づいたのは、電源を入れないで走る人も結構いらっしゃること。電動自転車なので、カギの解除をした後に電源を入れ、モードを設定する必要があります。
企画実施時に高橋さんのお店に寄らせていただき、気づいた点を相談しました。高橋さんも必死でメモされて、改善点として向き合ってくれています。ありがたいですね。
新潟中心街だから活きるシェアバイクの魅力と課題
―照子さんが感じるシェアバイクの魅力はどんなものがありますか?
私が一番感じている魅力は、いろんな人と直接触れ合えることですね。気になっていたところや、商店街にも寄りやすくて「何その赤い自転車は」って質問されて「いやこれはね…」って話や説明ができたり興味を持ってもらえて人と繋がるきっかけにもなりました。
車だと通り過ぎてしまう所にある人の笑顔や元気に触れて、こっちも心がフワッとなります。そういった繋がりをきっかけに、みなさんの困りごとや悩みもきける様なコミュニケーションも増やしていきたいです。
―シェアバイクはレンタサイクルよりも、返す場所が多かったり、24時間利用でき、時間も30分単位だったり、柔軟に使える利点もありますよね。
シェアバイクはスマホで一度登録さえしておけば、小銭を持ち歩かなくてもどこでも借りれるし、時間を調べたり、待ったりしなくていいので便利なんです。
私も以前、市内で2ヶ所のイベントに行くときに助けられました。県民会館から本町に行く際、県民会館からすぐの市役所近くにサイクルポートがあったんです。シェアサイクルで本町まで行けて時間も間に合い、利便性を実感しました。
ただ、そもそもスマホを使いこなせてない方にとってはハードルが高い、ということも実感しています。
行政側としては、運動することで高齢者の健康寿命延伸などにもつながるし、多角的な面で自転車は可能性があるので、もっと利用してもらえる機会を増やしたいですね。
課題としては、街中で右折しようと思うと2段階右折になることも気になりました。他にも、自転車の標識を見つけたり、道路に青い矢羽根がついてない道路を走るときに危ないと感じる所が多々あるのにも気づきましたね。
自転車愛好家の方からも「子どもや自転車利用者のマナーやルール教育も徹底しないと危険なリスクが高まる」という声もいただいています。
理想は、利用者が増え、市民の声を受けて問題が改善し、マナーがいい人が増えることです。そうなると、その人たちが子どもたちにも勇気を持って声をかける機会も増えるはず。私が地域の課題としている「寛容で温かい地域社会」を作るためにも、大事だと思っています。
市民の声をききながらシェアバイクをもっと身近に
―街の人の熱い思いで動き出した「にいがた2㎞シェアサイクル」事業。議会ではどんな話が出たんですか?
12月定例会一般質問で私は「来訪者や市民の多様な移動手段の確保について」質問しました。所管答弁では、利用の増加に伴い、生まれ変わる新潟駅の高架下などへより利便性の高いポートを設置したり、検証を踏まえたエリア拡大の検討をしていきたい、と答えていただきました。
現在、30ヶ所にポートを設置。利用率などのデータを取りながら、どこがよく使われているか、どの時間帯に使われているか、どこからどこへよく移動しているか等を検証しています。
サービス開始から、1日あたりの利用回数も順調に増加し、特に土休日は平日の約1.5倍と買い物やイベントへの参加、来訪者の移動シーンなどで多く利用されているのを感じますね。
―市民が使いやすいよう、市と民間企業で手を組んでエリア精査や拡大に取り組まれているんですね。
課題が出る度、問題と向き合い、新しい挑戦をされる高橋さんたちのおかげでどんどんいいものになってきています。
行政としても、自転車利用促進には都市交通政策課やまちづくり推進課だけじゃなく、土木課や、今後は観光推進課との連携も必要になってくるはずです。市民の声を反映させながら、行政との橋渡しをしていきたいです。
それには、市民の皆さんからいただく声も大切です。最近では「雪や雨で車体が傷まないか心配だ」という声もあり、私はすごく温かい方々の声だなと感じました。
ドコモ・バイク自体は耐久性の高いものですが、実証中なのもあり、屋根がないポートが半分ほどなので心配なのも分かります。市民のお声をヒントに、検証結果を見ながら行政と、保管や対策を考え、より良いビジョンを模索しています。
昨日担当課からいただいたばかりの情報を。冬季シェアサイクルの車体は、全体の半数ほどを中央区役所で屋根付き車庫入れ保管したとのことです。今後天候やアルビレックス新潟開幕戦、春の訪れの状況を見つつ、車庫出しをしていくとのことですが、市民の声を届け続けた結果です。嬉しいですね。
もう一つ、ホットな情報を。アルビレックス新潟
とのコラボで素敵なデザインが加わりました♪
今後は是非多くの企業様団体様から、広告掲載の協力をいただきたいですね。
にいがた2㎞シェアサイクル事業のこれから
―照子さんは今後行ってみたい場所はありますか?
私はプライベートを楽しむには8区の中で特に西蒲区が好きなので区を越えて行きたいですね。でも、シェアバイクの充電バッテリーはギリギリ持つかなという容量。だから帰ってこれるのか検証もしたいです。
―新潟市民が日常的に使えるように、そして観光客も新潟市内を楽しめるようになりそうです。
自分のお友達が県外から来たとき、地元の人1人1人が自転車で「私はここの場所が好き」という所へ案内できれば理想です。その人の言葉でこの場所が好きということを伝えることができれば、新潟の魅力がより伝わると思うし、市民1人1人が観光大使みたいですよね。
市民の多様な移動手段の確保はもちろん、観光ツールとしてのポテンシャルの高さも生かせていけるよう、高橋さんたちと一緒に取り組んでいきたいと思います。
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