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乳房と子宮

日曜日:X

昨日、SNSを見るともなくみていてひとつのポストに目がとまりました。今日書いてみようと思ったのは、そのポストがきっかけです。
東京のある街では路上で出会った男性に体を預けてお金を得る若い女性が増えた、という動画つきの投稿でした。



土曜日:ワークショップ

前日の土曜日に友人の自宅で開催された、乳房と子宮のマッサージのワークショプに参加したばかりです。
参加者には20〜50代までの各世代が揃っていてバランスが良いように感じました。東洋人は私一人だったけれど、唯一の帝王切開と母乳育児の経験者だったので、練習台としてはいい仕事ができたように思います。

若い人の中に混ざり込む時はなかなかの勇気がいることもあるけれど、入り口で勇気を振り絞ってみてよかったということの方が断然多いように思います。
ましてや今回は、英語も拙い上に、美しく若い白い肌たちの前に小麦色の50年生きた地層を刻んでいる体を披露するのは、ちょっとした度胸のいることでしたけど、それでも参加してみたい、覗いてみたい気持ちが少し優ってしまった。勇気という大袈裟なものでもなく、好奇心の勝利といった方が私にはピッタリ。

若い人と交流する機会って、日本に帰ったらあるのかなあ、そんなことをちらりと考えてみたり。



色が変わる、アメイジング!


テーブルの上の裸の私を囲んで覗き込むたくさんの青い目。ドキドキです。

Katが、Kikiの胸を見て気づくことを言ってみてください、と言います。

脇のリンパが腫れ気味です、
乳輪の形が私たちと違う、
触ってゴツゴツとロッキーな箇所があるので体内が少しヴァータ(ドライ)気味ではないですか?

視覚と触覚での観察で感じたことをシェアするのは、人の体や心に触れる仕事をする私達にはとても日常的なことです。

相手との間で、会話の中に出てくる言葉、それを発する時の表情、息遣い、感じる匂いや声の雰囲気。
無意識にでる仕草は言葉にならない言葉、ノンバーバルのコミュケーション。

「感じる」ということには、相手をジャッジしないニュートラルな目線で行うことがとても大事だと私たちは考えています。
体や心に触れる仕事をしていて最も難しくて今でも毎回腐心することは、ニュートラルでいること、力を抜いて先入観をなくすことです。
ものすごいマッサージのテクニックを持っていればそれはすごいことだけれど、小手先だけでは近づけないのが心と体。きっとこうなんだろうという見立ては必要だけれど、どういう人かなんてジャッジはコミュニケーションにもボディーワークにも少し邪魔です。

Katが、私が間違いなくKikiが母乳育児の経験者であると言い切れる1番の理由は、乳輪と乳首の色がダークだということです。新生児は目がほぼ見えないので、お母さんの乳首は自分の色を濃くすることで、赤ちゃんのまだぼんやりしている視界でも発見されやすいようにと変化するんです、と言った瞬間、若いお嬢さん達は、Wow, that’s amazing! と一斉に声をあげました。
別に私のおっぱいが褒められたわけではないけれど、女性の体に備わるシステムの素晴らしさにみんなで敬意を払った瞬間でした。

日本ではよく知られたことでも、母乳育児の割合が日本と比べて低いこの国では、そう言ったことも家庭の中で母から娘に話される機会は少ないのだろうと思います。

いい教材になれて嬉しかった。



自由じゃない子宮

私のお腹には、3度の帝王切開で残った大きな傷があります。

Katの見立てだと、癒着によって私の子宮はあちらこちらにくっついて右に寄っているそうです。本来の子宮は、自由に伸び縮みできるのが理想。どこかにくっついていると自由自在に変化できない。

体の中央線上でバランスを上手にとることができる自由な子宮は、女性の心と体が健康でいられるためにとても大切なことなんだそうです。

ゆっくりと体の中に沈んでいく優しくて柔らかいKatの手で、子宮と一緒に沈んでいたいろいろな想いが解けていくようでした。
自由になった子宮のおかげで、おそろしく可動域が広がった私の体。心まで広くなったような気分。女性の人生は、子宮の変遷と共にと言えると思います。
初潮を迎えるまでの子宮の成長、生理を繰り返す中で絶えず変化をし続ける体調、妊娠と出産は言うまでもなく、閉経と共にクロージングしていく変化の影響も少なくないと聞きます。

ホルモンについてなど、素人すぎて簡単には書けないけれど、子宮とホルモンの手にかかると女性の体と心は抵抗が難しく、時に感情をハンドルできない女性の悩みを男の子も男性も知っておくと、言い争うことも減って優しいものが増えていくんじゃないかな、大袈裟にいうならば、世界はもっとピースフルかもしれないな。


触れる


優しくちょうどよく触れるということは、考えているよりもずっと難しいことです。自分は他者に、そんなふうに触れることができているかな。
強く触れれば対象は反抗し、優しく触れれば頑なさも解ける。

強い圧は痛みを今に押し留めてしまうけれど、優しい圧は痛みをSomewhereに持っていってくれる。
すごく抽象的な説明だけれど、誰かがそんなことを言っていたなあと、ワークショップの最後にみんなで再確認。

子宮も乳房もすごいシステムだね、女性ってAmazing! だねと、みんなが心の中で静かに納得し、自分を大事にしようと感じたすばらしい土曜日でした。

なのに、翌日目にした日本の若いお嬢さんたちの現状のポスト。

どげんなっとーと、日本。
これはなんか一言いいたいばい!



Planned Parenthood

この団体のブランチが全米にあります。
避妊、望まなかった妊娠の中断、性教育、性にまつわる相談、いわゆる女の子から女性まで、誰でも利用できる相談窓口みたいな施設。


娘たちも息子も知っていて、学校で駆け込み寺的な情報として教えてもらうようです。
生理用品が買えないという状況の女の子も多い国です。生理用品をもらえる場所があるなんて、そんな国に育っていないおばさんの私は、娘から初めてその名前を聞いた時にすごいなあと驚き、携帯に最寄りの施設を記録しました。


望まない妊娠については、長く思うことがありますが、昨日の今日でそれをうまくまとめる自信がありません。
とてもデリケートで大切なことだと思うから、軽はずみにも書けない。自分の目で足でもう少し確認してから、自分の言葉で伝えてみたいと思っています。


日本でこの施設が紹介されているならばぜひ参考に読んでみたいとさっき探してみたんですけど、フリーでピルがもらえる、留学して妊娠しちゃっても手術できる、という内容のものしか見つけることができず、なんとも残念な気持ちです。


もっと大切なのは、

望まない妊娠が成立しないようにすること。
もしもの時は、祝福で命を迎え育てられるように、母親を支える大人がいる社会があること。

私はそう考えます。



ガールズよ
すごいんだぜ、君たちの体って

そしてなによりも、女性自身が自分の体をもっと尊敬できるようになること。

それができるのは、きっと教育。

家庭で、学校で、地域で、社会で、親が、祖父母が、先生が、大人が、報道が、政治が、国が。

教育って特別なことじゃなくて、みんなが努力して行うことなんだと私は思う。


女性なら特に、自分の体を鏡で眺めるということは案外頻繁にやることなんじゃないかなと思います。痩せた太ったおっぱいがどーだおしりがどーだ。気になるよね、当たり前だ。

もう一歩踏み込んで、乳房を丁寧にマッサージしてみるのはどうでしょう。

さらにもう一歩踏み込んで、自分の体をゆっくりとオイルマッサージする時間もすばらしいですよ。
ぜひ試してみていただきたいと私は思っています。
お嬢さんたちだけでなく、私と同年代の方やさらに先輩方にもです。
男性にも勧めてみたい。

自分の体を自分で触り観察すると、気づくことが出てきます。体と心の小さな変化に気づいてあげることができます。

こんなことができるのは、手が使えて感情が豊かな人間という生き物だから。


交尾じゃなくて、せっくす

快楽は生きるよろこびのひとつ。
大事です。

動物的な衝動に突き動かされること全てが悪いことじゃないけれど、今この字が読めているってことは、私含めて“人間”。
動物的な瞬間があったとしても、人間。

哀しいけど人間って、ああ自分は血の通っている人間なんだよな、と時々確認しないと冷血動物みたいになってしまう瞬間があるんじゃないかと、私は自分の浅い経験から思っています。

人間に踏みとどまる努力。
そんな言葉はなんだか変かもしれないけれど、今の日本と自分の乳房と傷を眺めてそんなことを考えた日でした。


気持ちが通い合うお互いに笑顔になれるせっくすをしよう。
それがきっと快楽ってことなんじゃないかと私は思う。

パートナーとは男女の組み合わせ、そんな前提で書くことがもはやダサいから、とにかく、自分の目の前のその人を大事にしませんか、どっかの知らない大勢の人も大事だけれど、まずは目の前の手の届く範囲の人を大切に。
これは自戒を含めて。

街で誰かを探して彷徨う女の子を作ってしまったのは、その子たちの親だけじゃなく、見守れなかった大人と社会でもあると私は思う。

人はひとりでは生きていかないということを改めて。
だから、人ごとじゃなくて自分ごととして物事を眺めてみるという試みを。



若い子達とわいわい談笑しながら豊かな学びの時間。
その夜は死んだように眠りました。
ボディーワークで人生が変わる?
答えは、Yes!だと私は信じています。

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