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2020年1月 第89回野村狂言座


年4回開催の野村狂言座は、大作から珍しい演目まで狂言盛りだくさん!ファンクラブに入ってだいぶたち、以前観た演目に巡り会うことも増えてきました。

今回は、万作先生の小舞「芦刈」から。落ちぶれた男が別れた妻とは気づかず、面白い舞を舞ってみせるシーンとのことですが、万作先生の軽やかな足拍子、清冽な肩や手の動きがすばらしかった。88歳とは思えません。舞台にお正月の清浄な空気を呼び込むような清々しい舞でした。

狂言1曲めは「節分」。めずらしくちょっとエッチな作品。季節先取りのようですが、昔は節分を境に年が変わるとされていたとのこと。女の最初のセリフで「夫は出雲大社に年を取りにいらした」ということでも昔の習わしがわかります。

夫のいない夜、蓬莱山の「鬼」が訪ねてきます。この鬼は毎年、節分の夜は落ちている豆を食べに日本にくることにしています。この鬼、絶対怖くない・・・。そんな予想に違わず肩をすくめてみたり、ひょいひょい足をあげて歩いたりとちょっとした動きがユーモラス。日本に着いて「あーくたびれた、軒先を借りて休もう」と、女の家に「ごめんください(狂言では、ものもう、案内もうと言う)」。

声を聞いた女は扉を開け、「誰もいないじゃないの」と閉めてしまいます。
鬼は隠れ蓑と隠れ笠を身につけていたのでした。蓑と笠をとった鬼が再び訪うと、女は「鬼怖い! 出て行け、出て行け」と追い出します。怖いといいつつ、自分で退治できるレベルの鬼なのです。鬼は「とってもきれいな女性だ」と一目惚れして、歌ったり、踊ったりしながら女にアプローチ。けっこういいお歌を披露するのですが、ものすごく邪険にされます。

まあ、鬼も悪いんです。自分が持っている杖を突き出して、「この先っちょを、ちょっとなめてくれ」と言ったり、いきなり後ろから腰に抱きついたりするんですから。その度に追っ払われてついに鬼も泣き出し、そこで女は「蓬莱の島の宝をくれたら仲良くする」と言い出します。それなら最初にそう言ってあげればいいのに! ドSな奥様❤️

ウキウキしながら隠れ蓑と隠れ笠を差し出し、「疲れたから腰をもんでもらおう」とゴロンと寝っ転がる鬼に、妻は「福は内、鬼は外!」と豆を投げつけて追い払うのでした。のどかですねー。

この作品の見所は、鬼の長ゼリフ。狂言らしい普段のセリフの後に節のついた歌がずーっと続くのです。今回は謡の詞章が配られたので、読みながら楽しく拝見しました。
万作先生、萬斎さんの属する野村家では、狂言の名曲「釣狐」を演じる前にまず、この「節分」を演じなければいけないという決まりがあるとか。
上演前の解説で、いろいろお伺いできてよかったです。



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