見出し画像

[音源あり]焼肉とお届けする旧車図鑑

外出自粛が解けて、すぐにでも行きたい外食が焼肉だったので、前回からの続き、音楽ファンにこそ触れてもらいたい、旧車會が好む車種とエンジン音のまとめを、焼肉の歴史と合わせてお届けします。自由研究の標本みたいなものと思ってお楽しみください。
前回記事↓

少し真面目な話、音楽や文化の視点で、説明するための共通言語が現状あまり無いのです。そこで、焼肉に例えて、オートバイのコールの音を分類していきます。また、車種ごとに聞けるコールは極力紐づけて、頭出ししたYoutube動画へリンクを貼ります。映像と共にお楽しみください。

1. カルビ 王道の四気筒

カルビ

焼肉を注文する時に必ず注文するカルビ。
格安のチェーンで食べる一皿290円のカルビからブランド銘柄の霜降り和牛カルビまで幅広い。
そんな王道感のあるコールのカテゴリは四気筒、俗称「四発」だ。
四気筒というのは、簡単に言うと、400cc(ペットボトル1本分弱)の排気量をピストン1つでやるより、100ccの紙パックの野菜ジュース分のピストン4つに分け、爆発の回数増やした方がパワーが出るんじゃね?という発想で開発されたエンジンのこと。エンジンから4本パイプが生えてたら、四気筒と思って良いです。

4気筒

MVアグスタというイタリアのメーカが1966年にレース車として作りつつも、市販車としては1969年に日本のHONDAがCB750で世界で初めて実用化した。(wiki知識、GIFはwiki CC) 

四気筒

この四気筒が、馬力至上主義の時代にパワーの指標になった。
暴走族で好まれた四気筒を時系列であげる。この辺はエリック・クラプトンがフェンダー / ストラトキャスター、ジミー・ペイジがギブソン / レスポール、みたいな話と思ってください。

■ 1974年 HONDA CB400FOUR(俗称:よんふぉ〜)
初の四発400cc。中免で乗れる四気筒の歴史は(ほぼ)ここから始まる。
・「特攻の拓」誠さん、マー坊

画像4

1975年 道交法改正
以降400cc以下の中型限定と限定なし(大型)に分かれ、750ccのようなバイクは限定付きの中免では乗れなくなる。以降、各社400ccの四気筒開発が急務に。

1976年 名店誕生
焼肉屋の元祖と言われる「明月館」出身で、タン塩の生みの親、新井泰道氏が六本木に「叙々苑」を創業。以降、高級焼肉ジャンルを切り開き、80年代バブルを経て業界王座に君臨。(写真:公式サイトより)

画像25


1979年 KAWASAKI Z400FX(えふぺけ、えふえっくす)
よんフォーがコスト高で生産中止になった後のカワサキからの中型四発。
・「特攻の拓」外道の秀人くん、ロクサーヌの緋咲

画像5


1980年 YAMAHA XJ400(ぺけじぇー)
さらに後発のヤマハの四発。
・「特攻の拓」中坊の雛子が盗んだバイク

画像8


1981年 HONDA CBX400F(びーえっくす、しーびーえっくす)
他社の後発に押されたホンダが期待に応えた四発の金字塔。伝説の単車。
・「特攻の拓」ジュンジ(エンジンはCBR)
・「BAD BOYS」司
・拙作「工藝族車」ベース車両、手前味噌だが、この時点でも充分シブかった。

スクリーンショット 2019-12-18 19.10.05

CBX抜群にキレッキレのコール♪
CBXのミッキーマウスコール♪
CBXのX「紅」コール♪


1983年 HONDA CBR400F(しーびーあーる)
回転数を8500rpmに上げるとバルブ(エネルギーになるガソリンと空気の吸い込み口)が元々の2つにさらに2バルブ加わって4バルブになる「REV」搭載。コールのしやすさから根強い人気。
・「特攻の拓」ジュンジ

画像7


・某所にて、福岡は筑豊の香りがするバクハツカラーCBR

画像23


■ 1989年 KAWASAKI ZEPHYR

比較的新しい車種なので、旧車會ではしばしば現行車呼ばわりだが、そんなこと気にするかどうかは乗り手次第だ。
・「特攻の拓」拓の2台目

画像9

ゼファーのメロディ(?)ーコール♪
ゼファーの水戸黄門コール♪
ゼファー沖縄コール掛け合い♪

2. ハラミ バランスの良い二気筒

ハラミ

カルビのほど脂っこくない、程々の食べやすい赤身を二気筒に例える。
というより、「バブ」と呼ばれるHAWK-IIを、ハラミとして紹介する。
※人気のGSも二気筒だけど、別ジャンルとして扱います

バブの前身
昨2019年に亡くなった内田裕也氏がプロデュースし、海外評価も高い70年代のサイケデリックロックバンド、「フラワートラベリンバンド」が、全裸で跨って疾走する写真がある。

画像25

「暴走族のエスノグラフィー(新曜社)」による日本のバイカーギャング史を引けば、サーキット族期から、暴走族期への移行期となる時期だ。
この中央のバイクが「バブ」の前身となる二気筒のドリームCB250T。これとCB400FOURの良いところを集めてHAWK-IIが誕生する。

■ 1977年 HONDA CB400T HAWK-II(バブ)
旧車會関係者から「ちょうどいいブス」と聞いたことがあるが、
突出してスゴくもないが、悪くもない、ちょうどいい乗りやすさ、ということだと思われる。
エンジンのバーブーという音が通称「バブ」と呼ばれ、定着した。
・「湘南爆走族」石川晃

画像12

・某所にて、テラッテラに磨かれた激渋ファイアパターンのバブ

画像24

バブ特有の音が味わえるコール♪

3. ホルモン オルタナディブな一大勢力、吸い込み

ホルモン2

かつて「放るもの」つまりは捨てるもの、とされてきた内臓を焼いて食べ始めたと言われるホルモン。
今やホルモン専門店も登場するくらい、焼肉の一大ジャンルを占める、カウンターカルチャー的存在だ。
一方、SUZUKIのGSのエンジンを中心に、排気を出していたスロットルを戻すところ、排気をし終わる直前にガソリンを吸気し、エンジンがオーバーラップを引き起こして、変な音がでる、ことに注目した人間がいた。この挙動を正常だという人もいるし、エラーという人もいるが、僕には分からない。とにかくこれがこれが「吸い込み」と呼ばれる流儀の発祥だ。
暴走族メディアの編集者によれば、神奈川の族が吸い込みを初めてコールに起用したと言われている。
大晦日からの初日の出暴走で、目的地だった富士急ハイランドの駐車場で、一際目立つコールとして、全国的に知られたとの言い伝えがある。

■ 1978年 SUZUKI GS400E(じーえす)
キャストホイール(アルミ鋳造)、扇型のサイドカバーがトレードマーク、族車の中でも人気上位の名車。
・「湘南爆走族」江口洋介のファイアパターン

画像19


・「特攻の拓」地獄のリョウ

画像13

女子のGS吸い込みコール練習♪
クイックなGSの吸い込みコール♪

■ 1980年 SUZUKI GSX(ざり )
GSの後継、テイルの形やカラーで、前期がザリガニ、後期がゴキブリ由来の愛称で呼ばれる。

・某所にてガーリーなザリ、夜に煌めくであろうフレームに這うLEDにも注目。

ザリ_2


■ 1983年 
SUZUKI GSX (KATANA)(ごき
いわゆる初代KATANAのゴキ。

ゴキ

4. レバ刺し 法規制で希少性が増す、2スト

レバ刺し

焼肉屋で、屈託無くレバ刺しを注文していた時代が懐かしい。
惜しくも食中毒が問題になって、ごま油と絡めて食べるとろけるような珍味は店では食べられなくなってしまった。
同じく、環境に配慮する規制から新車が発表されなくなった2ストロークエンジンのオートバイは、旧車でしか見ることが出来なくなってしまった。四発などのその他の4ストロークエンジンとの大きな音が違いは、エンジン音だ。構造的な特徴は、シリンダー内のピストンが一往復するごとに毎回送り込まれる燃料がスパークし、これが甲高い音になって排気されることだ。

画像16

チャンバーの芋虫のような丸々と太ったビジュアルも特徴だ。燃焼しきらず勢いよく出過ぎる排気を一度この芋虫に充満させて圧を弱める。

画像17


一点注意なのは、恋人を後ろに乗せて走ると、不完全燃焼の真っ黒いオイルが漏れなく服に飛び散るので、気をつけないと悲惨なことに(実話)!
限られた排気量でパワーが出るので、かつては原付でも広く採用されていて、JOGやDIOの「パイーーン」というスクーターらしい音は聞き覚えがある人も多いだろう。この2スト特有のエッジの効いた音をコールにすると、音の鋭さや哀愁が湧き出してくる。

■ 1971年 SUZUKI GT380(さんぱち )
・「湘南爆走族」サクライ

画像20

・某旧車會イベントにて、男の手作りチャンバー、メガホンのさんぱち。

画像22

真鍮マフラーで年季と哀愁のサンパチメロディコール♪

ちなみに仮面ライダーの本郷猛のマシンもさんぱち。

画像28

ゴレンジャー レッドマシーンもさんぱち。

画像29

■ 1976 KAWASAKI KH400(けっち)
・「特攻の拓」あっちゃん

画像18


■ 1980年 YAMAHA RZ250・350(あーるぜっと)
・某旧車會イベントにて、2ストでタケヤリ!チャンバー細いっすね…。

画像21


RZのカリカリしたメロディコール♪
RZの甲高い歯切れのいいコール♪


■ 2008年 排ガス規制強化

何度目かの規制強化で、いよいよ2ストエンジンの基準クリア不可能に。
実質、この辺りから、新車販売の2ストバイクが消滅。

■ 2011年 食中毒事件
焼肉店でレバ刺しによる食中毒事件発生。

■ 2012年 食品衛生法改正
レバ刺しのナマ食が禁止に。お店からレバ刺しが消滅。
2ストとレバ刺よ、永遠に。

まとめ

以上、歴史を踏まえた旧車と焼肉の四つジャンル別のまとめでした。
ヒップホップでも地域によってテキサスのScrewedという回転数を遅くした低音のスタイルだったり、アトランタのオートチューン多用のTrapのようなスタイルがあるように、コール自体にも「湘南コール」「沖縄コール」というように地方別の方言があり、更には地元だけで伝わるリズムも含めて実に多様で、年々スキルも上がり続けている世界だ。
例えば、このようなXのHIDEとPATAのハモりギターを彷彿とさせる合奏は、地元でやっているリズムを正確に共有していないと不可能な芸当だ。


ジャンル分けというのは時に物事をつまらなくさせるけど、未知のものを理解するのに、何かに紐付けながら分類することで理解が深まることがある。今回エンジンの種類で分けているのは、僕が理解できるのがそれだからに過ぎず、その他にも色んな切り口で楽しむことができる。
気になる人はYoutubeやSNSで「バイク コール」と検索すればあらゆる音色を楽しめるのでよかったら。

長文のお付き合い、ありがとうございます。
以降、この分野を違う形で展開する取り組みを伝えていこうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?