Woolgatherer

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戦争災害報告-case01

記憶の始まりは、違和感だった。 身体の中で、本来居てはいけないはずの冷たさが震えている。必死の形相から視線を下ろすと、敵兵の銃剣が深く自分の体を貫いているのが見えた。直後に鋭い痛みが走る。思わず膝をつくと、喉の奥から泡立った血が登ってくる。不快感にたまらず吐き出した。ドロっとした血が口の端を滑る。刺された。致命傷だ。 ここまで上官の命令に背くことも無く、誠実かつ必死に戦場に食らいついてきたが、それももう、あっけなく終わるらしい。 改めて自分を刺した者の顔を見る。若い。歯をガチ

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