ヒラヒラプカプカ
「寒いから出たくないね」
「ほら起きよう。学校に行かなきゃいけないでしょ?」
「でも」
「きんたろうもヒラヒラしてるよ」
「きんたろう?」
この子は金魚が好きだった。他の子がかわいいマスコットのシールをねだるかたわら、金魚のものばかりを集めようとした。
「交換日記も金魚のシールを貼るの」
そんなことを言ってきたときには、これは筋金入りだなと認めざるを得なかったことを覚えている。
「ほら、ご飯あげるんでしょう?」
「うん」
「朝ごはんも用意しているからね」
「お米?」
「そうよ」
「みそ汁は?」
「あるから早くしましょうね」
すでにわたしは背中を向けていたものの、ゴソゴソとしている音からも準備を始めたらしいことはわかった。
これから、忙しない朝がはじまる。きんたろうは相変わらずプカプカしていた。
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