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想像世界の廃棄場

「大量だ」
「大量なの?」
「おうとも、こりゃもう大量の大量よ」

ほこりっぽい風のながれる街とも言えぬ街。
そこは想像世界の廃棄場だった。

「ほら、これは城だろ。見たこともねえ機械にぐにゃぐにゃの金」
「おもしろいよ!おもしろいね!」
「な、こりゃ大量だろ?ほら、早くとるものとってずらかるぞ」
「そうだなあ」

グッ。
みにくい声が漏れた。彼が振り向くとその子はうずくまって背中に手を当てている。駆け寄り、手を当ててやると球が転がった。小さな玉はコマのように回転し、曲線を描きながら動きをとめる。
嫌な予感が立ち込み、しゃがれた声が姿をともない現れた。

「や、景気がいいね」
「おまえの遊びに付き合う暇はねえ。さっさととるもん取って消えやがれ」
「おお怖い。噛みつかれたらコトだ。少し大人しくなってもらおうぜ」


「ねえ。大量は?大量はどこ?」

彼の体をその子は揺さぶると、痛みに意識がむりやり起こされる。

「いてえ。こりゃもう大量だ」
「痛いの?大量なの?」
「どっちもさ」

彼はなんとか立ちあがり、鼻を鳴らして詰まった血を噴き出す。
持ってきていた杖を手に取り、ねぐらに向けて足をもち上げる。

「そしたら今日は痛いの食べるの?」
「まあもうちょっとましだわな。その辺の、適当なもん拾ってくれや」
「ね、見つけたんだよ。青色のガラス。きれいだよ」
「ああ、上等だ大量だ。ありがたいったらねえ」
「うれしいね」

その子は当たりを駆けずり回り、彼はそれを優しく見守る。
首根っこを掴まれると、その子は静かになってガラスを眺めた。引きずられ、かかとが削れる心地がしても気にすることなくガラスを眺め続けた。



おひさしぶりです。
特に理由もないのですが、おひさしぶりになりました。

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