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雨の冠

パチパチ、パチパチ。
軒先から滴り落ちる雨が石に落ちるたびに音が鳴る。冠が現れては沈み、権威もなく水溜りに沈む。

「ねえ、全然綺麗じゃないね」
「あのおじさんのやつと比べると?」
「そう。がっかり」

トタン屋根から流れ落ちる雨垂れは、途絶えることなく滝のように流れ落ちている。思い出話が好きなじいさんに付き合って、雨の美しさを教えられていたせいか興醒めしていた。

「泥やだ」
「ちょっと待ってよう」

女の子は走り出し、それにつられて男の子もその場所を後にする。格子のような水を払い退け、ずぶ濡れになりながら姿が消える。あとはもう、雨の音に混ざり合って、子供たちのはしゃぐ声がかすかに聞こえるのみだった。

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