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言い淀む

「いや、いささか。ああ、まあ」

歯切れの悪い言葉を並べるとき、いつも彼は良くないものを運んでくる。付け加えると、彼の悪いところはもごもごするばかりで本題に触れないのだ。

時間稼ぎと指摘されるくせに、手遅れになるまで決して口を割ろうとはしないのだ。楽しんでいるわけではなく、勇気を振り絞ろうとしているのだから尚更たちがわるい。

「早く言ってくれよ。教えてくれ、じゃないと大変なことになるんだろう?」
「おやつ、忘れちゃったんだ。だからあそこの家に入った野球ボールを取るためには、誰かがペロの相手をしなくちゃいけない」

おじさんの怒鳴り声が聞こえた。やっぱり、いつも通りに手遅れになったみたいだ。


ご清覧ありがとうございました。

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