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リピートアフタミーと老教師は言った

「シュミレーション」

正しくはシミュレーション。英語の発音を日本語に無理やり当てはめようとすることにより表現の揺れが生じることはままあることだけれど、正確な表現に努めようとすれば、「シミュレーション」が正しい。

シミュレーション。
何かの出来事を再現しようとする試み。
その出来事を理解するために行うことが多い。
実際にそれを試すことが、時間的・金銭的・倫理的などの制約が課せられる場合に、代替手段として採用される。

もし僕が、サラリーマン人生を捨てて、マイク一本ヒップホップで生きていこうと仮定する。成功するかもしれないし失敗するかもしれない。多分失敗するだろうが、やってみないと分からない。やってみないと分からないことだけど、何らかの形でシミュレーションすることで、成功するかどうかを予想可能となる。

大事なのはどうシミュレーションするかどうか。一番確実なのは、僕のクローン(性格や能力などすべて完全にコピーされている)を作って、マイク一本持たせてストリートに放り出すこと。
果たして、僕のクローンが見事スターダムにのし上がることができれば、あるいはどこかで行倒れても、このシミュレーションは確実に近い。
ただし、現実世界では同じだけ時間が流れるわけで、僕はシミュレーションが終わった時には、クローンが過ごした時間分、今よりさらに年老いている。これではシミュレーションした意味がない。

もっと早く結果が知りたいならば、コンピュータ上に世界をある程度模倣した仮想世界を作って、その中に自分を模したアバターを放り込ませるような手段がある。
しかしコンピュータ上に作った世界は本当の世界じゃないし、その中の僕のアバターも本当の僕ではない。パラメータが足りない。パラメータが足りないと精度が出ない。

世界をコンピュータ上に正確に再現しようとするのは、原子のレベルでは行われている。原子同士の相互作用だけをパラメータとしてそれぞれの原子たちがどのように振舞うかを計算することができる。
原子レベルから組み立てていって分子、それが組み合わさって人だったり動物だったり、植物、クルマや建物まで、すべてを再現すればもう一つの世の中が完成だ。にはならない。

原子のふるまいを計算するのにはとても時間がかかる。スーパーなコンピューターを使っても、10億分の1秒を計算するのに1日かかったりする。原子の数が増えれば計算時間はもっと必要になる。

ちなみに人間は何個の原子から成り立っているかを調べてみると、こちらのサイトに載っていた。体重60 kgの人間でおよそ5.72 × 10²⁷ 個。5720杼(じょ)個である。アボガドロ数が6.02 × 10²³だからその1万倍くらいなのか…。

というか1モルの原子が集まった時の重さがその原子量(例えば1モルの炭素だったら12グラム)だし、人間はだいたい炭素と水素で作られているわけだからそれはそうだな。当たり前だな。

じゃあなんすか、シミュレーションなんか無駄だってことすか?

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