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豆腐バーから学ぶこととは?

 日経新聞によると豆腐バーがヒットしているという。

 これまで豆腐は冷やっこやみそ汁に入れて食べるのが定番であったが、開発者が豆腐はもっと自由に食べてもいいと、硬くてチキンバーのような豆腐を開発、それが若い世代の消費者に刺さり大ヒットしているという。常識にとらわれない、斬新な発想の勝利である。

 ここで筆者が気になっていることに触れておこう。

 日本の研究開発力の低下である。日経新聞によると、17~19年の世界の自然科学分野の学術論文のうち他の論文に引用された回数は日本が過去最低の10位で、中国が初めて米国を抜いて首位に立ったという。

 また、時価総額で見ると、日本の企業は驚くほど低迷していて、米国のGAFAに遠く及ばないだけでなく、中国企業にも負けている。

 なぜこれほど日本の科学技術力が低下してしまったのだろうか。その原因のひとつは日本の科学技術予算が外国に比べて伸びが低く、また、04年の国立大学法人化後に運営交付金が減り、大学院生の待遇は悲惨なほど劣化し、優秀な研究者が日本から流出していることである。

 さらに、日経新聞によると、今年ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏は「日本では、ボスが自らの後継者を育てるために若手を使っている。これでは新しい分野を切り開くことはできない」と言っているという。また「米国では学会でかんかんがくがくの議論が繰り広げられる。…日本ではほとんどみられず、研究者は成長する機会を失っているのではないか」と言っているという。

 いまや日本は科学技術の分野だけでなく、企業でも政界でもあらゆる分野で既得権益層の縛りでがんじがらめになっていて、ふんづまり状態で、イノベーションが起らずに、窒息状態になっている。

 このままでは、日本の企業の生産性はあがらず、日本企業の国際競争力はじり貧になっていくのではないか。それはとりもなおさず、若者の未来が危ういということである。こうした現状を打破していくためには、既得権益層からの同調圧力を跳ね返し、若者が自由に伸び伸びと活躍できる社会にしていく必要があるのではないだろうか。

 豆腐バーは、そんな閉塞感に満ちた現状のなかで、いままでの常識にとらわれずに、自由な発想で成功を収めたといえる。それは少しとんがったものでも受け入れる寛容さがあったからではないだろうか。和をもって貴しとするは日本の伝統ではあるが、それが同調圧力になって新しい発想を抑えるようとするのではなく、多様性を受け入れる寛容さが必要だということが問われているのではないだろうか。

 


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