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人類よ、自動販売機を図に乗らせるな

 冷たい飲み物を飲むと歯が染みる時期になってきた。必然、暖かい飲み物を飲みたくなるが、この時に気になったのは自販機に刻まれている、こちらを挑発しているような「あったか~い」の表記だ。


 この話の結論から言ってしまえば、この表記は自販機が人類を格下に見なしているという証明に他ならない。


 まず気になる点は、「あったか~い」という語感だ。この表記を見て、「客を舐めているのか」と感じるのは妥当であろう。
 もし、スーパー等で客が「この商品の温度は何度ですか?」と聞き、店員が「あったか~い」とだけ言い残してバックヤードに帰ろうものならば、良くて都市伝説、悪ければ商品棚の周りがクレーマーの巣窟となることは疑いようもない。


 しかし、こと自販機においてはそれが許されている。店員に懇切丁寧な接客を要求する身の程知らずは居ても、自販機に敬語を求めるお客様はいらっしゃらないのだ。


 つぎに触れておくべきは「あったか~い」とやらの定義であろう。
 多くの場合、商業製品においては細かくスペックを表記することが求められるが、自販機においては「あったか~い」というあやふやでどうとでも解釈できるような言葉を用いている。

 通常、商業活動では需要する人の気持ちを想定して動くと考えられるが、こと自販機に関しては、購入する客のほうが「自販機が考えるあったか~い」について忖度した上で購入しているのだ。これは到底対面販売では考えがたく、自販機の慢心を増長させていることは言うまでもない。


 このように、少し考えるだけでも「あったか~い」という表記が、自販機が自身を上位であると考えている証左であることが分かる。


 もう一つ、自販機が人類を見下すに至った要因として考えられるのは、購入する人類側の自販機に対する態度であろう。

 ショバ代と言わんばかりに小売店の同じ商品より数十円かさ増ししたものを平気で購入し、取り出し口という名の躯体下部に乱雑に吐かれた飲料を平身低頭・頭を垂れて喜々として受け取る……… 客たる人類がこのような態度をとっていれば、自販機が自身の優位性を認識するのは当然のことであるといえる。

 加えて、先程の「あったか~い」だと「つめた~い」だのといった舐め腐りポイントを容認していることや、人類の体躯が自販機のそれより大抵の場合小さいことを考えれば、優位性の認識に拍車をかけることは言うまでもない。


 たかが自販機の問題、と考える人もいるかもしれない。しかし、機械が人類に取って代わりつつあるとされる21世紀においては由々しき問題である。近年、自販機も多様な機能が搭載されつつあるが、もし人工知能が自販機に搭載された日には、いの一番に人類に反旗を翻すのが自販機であることは上述のことを踏まえれば疑いようもないのである。


 人類の作り出した文明に人類が負けるなどという滑稽なことがあってはならない。だから私は自販機を使わずにスーパーで飲料水を買うのである。決してケチってとかそういうのではない。高潔な思想に基づいたものなのである。たぶん。


※この文章の正確性・信憑性は一切保証いたしません

フタコブラクダのコブを同意の上で上下左右計13個にした後に、黄色いおべべを無理やり着せる活動がメインです。最近の悩みは鳥取県の県境を超えられないこと。