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お注射怖い(2針目)


また注射だ。

1ヶ月前に打ったのになんでまた打たなければならないのかと思うが、そういうものらしい。

針を二の腕の筋肉に打ち込まれるためだけに、公共交通機関を乗り継いで接種会場へと向かう。新橋・横浜間に初めて列車が開通したときに一体誰がその技術を針を刺すためだけに使われると想定したことか。
会場受付について、慣れた手つきで予診票・本人確認をスムーズにすます。最低限の言葉だけ交わし、順路を進むその姿はさながら常連客だ。

そして関係ないが、初めて丸亀製麺に入ったときはそのシステムの初見っぷりに困惑したが、2回目は自分の好みにレシピを頼むことができるようになったことを思い出した。
ひょっとしたらワクチン接種会場の設計も丸亀製麺に学んだのかもしれない。もっとも、うどんどころか人体に異物混入(厚労省認可済)しているが。

受付を終えて、接種会場の入口へと向かうと「いってらっしゃい〜」と言葉をかけてくる。
スタッフは働きすぎてここがディズニーランドにでも見えてしまったとでもいうのか、プーさんのハニーハントとかジャングルクルーズに並んでモデルナのワクチネーションがあったらおかしいだろう。
しかし、そう考えるとモデルナとかファイザーってディズニーヴィランにいそうな名前だ。ジャファー、ファイザー、フック、モデルナ、この中に人間を針で刺すことで守ってくれるヴィランがいます。誰でしょう。

くだらないことを考えつつ、乗りたくもないアトラクションの待機列を進んでいく。ファストパスは取っていないが、閉園前でもないのに待機時間は5分未満で、並んでいる時間の方が短いくらいの優しい仕様となっている。待機時間が長い方が恐怖が増幅されるので、これは皮肉ではなく本心である。

待機列を道なりにすすみ、そして嫌々ながら座り、注射針を刺される態勢へと構える。
接種係には「苦手ですか〜?」と聞かれたが、得意なわけないだろ。隠語で呼ばれるタイプの薬剤を注射する人間だって、好きであれど注射されることが得意というヤツはいないと思う。

なんとか接種を乗り越え、待機場所へと向かった。1回目の接種では背筋を丸め、目を瞑り、手を強く握るという羊水の中の胎児とそう大差ないスタイルで受ける恥辱を経たが、今回は背筋を伸ばして注射針を迎え入れることができた。
人間、必ずしも苦手を克服する必要はないがそれでも成長しているということを実感する。

さて、扇子で身体を仰ぎながら待っていると、係員に「接種してから暑くなられましたか?」と話しかけられた。
こちらにも当然プライドがある。よって「注射が嫌いで緊張で暑くなって…」とは言うわけもなく、「打つ前から暑くて」と言葉を濁しかつ嘘はつかずに躱した。

だがしかし、いくら安全性が保証されているとはいえ、本来鋭利な金具を人体に刺されるのだから、少しは怯えるのが普通ではないだろうか。
むしろ、他の連中みたいにスマホを見ながら涼しい顔で時が過ぎるのを待っている方がおかしい。
というかワクチン開発だけじゃなくて針以外の接種開発も促進しろよアメリカ大統領!

そのように理不尽に叫びたくなったが、投与された薬液が何か違うドラックなのではないかと思われ、係員の手間を増やしてはならないという鉄の理性をもって15分を無事に過ごした。

帰り際に、ぬいぐるみを抱えながら歩く幼児を見かけた。
次に注射する時は、私もぬいぐるみを抱き抱えながら打てば少しは緊張が和らぐ気がするのだが、成人がぬいぐるみを抱いて外出するのは流石にビジュアル的にキツいものがある。けれども、もし全員がぬいぐるみを抱きながら生活をするようになったら、間違いなく社会全体の幸福度は5割増しだと思うのだが、次の選挙で誰か公約にしてくれないだろうか。

ちなみに副反応は頭痛・眼痛と微熱でした。客観的に見たら中途半端な症状なのにしっかりと半日は動けない痛みがあるのはネタにもしづらい。









フタコブラクダのコブを同意の上で上下左右計13個にした後に、黄色いおべべを無理やり着せる活動がメインです。最近の悩みは鳥取県の県境を超えられないこと。