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マイナンバーカード発行と22世紀のネコ型ロボット

ようやくマイナンバーカードを作成した。


5年くらい前に(頼んでもいないのに)国から送られてきた「てめぇのマイナンバーを通知しますよカード」があれば不便しないので、今まで作っていなかった。

が、今作ると結構な額のポイント、もとい金銭を貰えるらしいと聞き、牛のようにヨダレを垂らしながらカード受け取りの申請と予約をした。

資本主義でぶん殴られたってことだ。


しかし、正直なところ「クレジットカードを作れば5000ポイント!」とか「〇〇保険の資料申請したらゲーム内コイン1000コイン!」みたいな、10年前のソシャゲ時代から今に至るまで連綿と続く伝統的な方法を用いてまで、マイナンバーカードを促進してくるとは思わなかった。

立法権を駆使しまくって、法律でカードを作らざるを得ない状況を作り出すのかと思っていたのだが、まさか札束。

しかもポイントという名において、技巧を凝らした紙切れという形すらもとらないような仮想空間上の不換貨幣で、仮想上の尻を叩くようなプレイを国が行ってくるとは。

よく小学生が言いそうなこととして「国がお金沢山刷っていっぱい配ればいいのにね!」という文言が考えられるが、令和の小学生は「国がスマホのポイントをいっぱい配ればいいのにね!」とか言うようになるのだろうか。

ということは、賢い小学生なら「国という民意によって権力を持つことが許された機関が金融緩和政策をとって中央銀行に大量に紙幣を刷らせた上で、キャッシュレスにおいて商品交換機能を果たしているポイントという形をとって効率的に国民に対して貨幣を配ればいいのにね!」とか言うようになるかもしれない。
想像上なのに、服に隠れて目立たない部位に軽くグーパンをカマしたくなるが、想像上のその後には小学生が弁護士を連れて私の前に現れてくる。

そんなことを思いつつバスに揺られて、札束で尻を叩かれた資本主義の豚は役所に到着した。

今思えば、先週に住民票等を取得しに区役所へと赴いた日に同時に受け取るようにしておけばよかった。
このままのペースで役所へ向かえば、1年後には「常連の△△さんいらっしゃいました!」とかバックヤードで言われて、お通しに住民票(抄本)とか出してくれるようになったり、裏メニューとして他人の戸籍謄本を開示してくれたりするようになるだろうか。

たとえ本当に上述のことがあったとしても、他の納税者に袋叩きにされるだろうから行わないが。

そんな妄想は置いておき、窓口入口の端末を操作して「カードの受取に来たから早く寄越せ」という意思を4メートルほど離れた6番窓口に僅か2タップで伝え、返答に感熱紙にアラビア数字が大きく印字を受け取るというデジタル和歌をこなした。

30秒ほどして返歌もとい、窓口から呼び出され、向かった先には初老をとうに超えた、如何にも「人生経験積んでますよ」という男性が迎えてきた。

「役所」「中高年」というワードだけ聞くと、高圧的に接されそうだ。
しかし、その男性は市場原理から隔離されている公務員という立場であるにも関わらず、今まで私が相対してきた店員やスタッフの中でも一番と言っていいほどに、こちらに対応してくるのである。
私も、最低でもタメ口混じりでの応対かと想定していたが、よほど人間的に優れた人なのだろう。


一回りは優に離れた人間を前に、「△△様」という敬称でこちらを呼称する男性に呆気に取られつつも、本人確認の身分証明等を進めた後に、パスワード等を決めるべく窓口奥の部屋へと案内された。

案内された先に置かれているアクリル板で仕切られた長机の一区画に座し、区画の右端に置かれたタッチパネル式のモニターを男性に指示されて操作する。

モニターの縁には既に字の大きく刷られたテープライターで分かりやすくしようとする努力が見えている。
にも関わらず、こちらが恐縮するほど丁寧な男性はやはりご丁寧に操作方法を説明してくる。

なるほど、仮に接客に関する国家資格を得たとしてもここまでの応対はできないだろうと感銘を受けつつ、半角英数字n文字以内のパスワードを打ちこむ時に意外な欠点は現れた。

英数字のキーボードが全てアルファベット順に並べられている。
まさか「Q」の位置に「A」があるとは思わなかった。
アルファベット順を思い出す時に、ABCD…という歌を諳んじている人間からすればこれほど操作しにくいものはない。英語力が皆無であるのは自業自得であるが。

もちろん、役所が設計したシステムではなく外注したものであろう。
しかし、人差し指をキーボード2段目左半分を滑らせながらQWERTYと打ち込むくらいにはQWERTYに慣れ親しんだ人間にとっては、衝撃を感じざるを得なかった。

「というか、アルファベット順だけをデフォルトにして誰が得するんだ。
フリック入力が得意な人には、フリックを。QWERTYが打ちやすいという人にはQWERTYをという様に、申請する各々が選べるようなシステムを発注すれば、受付時間の短縮にも繋がるんじゃないか?たとえシステム構築で費用がかさんでも、機会費用の観点から見ればトータルで黒字じゃないか?」

と、モニターに問いかけつつも、予め考えてきたパスワードを打ちこんでいく。

パソコン未経験者と相違ないスピードでアルファベット順キーボードにてパスワードを確認分含めて2回入力し、その他4桁のパスワードも打ち込んだ上で、無事にカードをゲットすることができた。

中学校以来、電子辞書に甘えて先延ばしにしてきたアルファベット順をしっかりと覚えなければならないとこんなところで思わされるとは。

……無事にマイナンバーカードの発行を終えると、礼儀正しい男性が「今マイナンバーカードを作成した方に机に飾られているドラえもんのクリアファイルを配布しています」と述べ伝えてきた。

断る理由もないので「では、頂いていきます」と返し、帰りがけにファイルを見たところ、

このデザインだ。

ジャイアンの服みたいな背景に背負って、誇らしげにマイナンバーカードをグーしか出せなそうな左手で掲げている。


いや、なぜドラえもんがマイナンバーカードを誇らしげに掲げているんだ。

私の記憶が確かなら、お前は99年先の2112年9月3日にマツシバ工場で質の悪いオイルを使って生産されたのではなかったのだろうか。

なぜ人間でもなく、時系列的に戸籍は愚か住民票も持っているはずがない、自称猫型ロボットに発給されるはずがないモノを持っているのだろうか。
フエルミラーを2回使って増やしたのか、あるいはとりよせバッグで「番号花子」さんのマイナンバーカードをPRのために盗んできたのかというタイムパトロール案件の不正を疑わざるをえない不祥事が行われているのである。

まさか役所がマイナンバーカードの偽造・窃盗を容認するのかという衝撃を受けるとは。
そんな衝撃をカバンの中に抱えつつ、バス代をケチって徒歩で帰宅路を辿っていった一日であった。




フタコブラクダのコブを同意の上で上下左右計13個にした後に、黄色いおべべを無理やり着せる活動がメインです。最近の悩みは鳥取県の県境を超えられないこと。