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むかし書いた韓国コラム #888

 いまから10年前の2000年4月。当時の金大中大統領と金正日総書記による南北首脳会談の開催が電撃的に発表された。その日の夜、会社帰りに同僚とビアホールで飲んでいたところ、テレビ局の取材クルーが現れ、隣のテーブルで飲んでいたグループの撮影を始めた。南北首脳会談開催発表を受けた市民の様子を撮りたいとのことで、「乾杯!」の代わりに「統一!」とかけ声をかけるように指示していた。要は演出という名のやらせなのだが、当日のニュースではその様子がしっかりと報じられていた。太陽政策による南北和解ムードの高まりが肌で感じられるほほえましいエピソードだ。

 それから10年。哨戒艦沈没をめぐり朝鮮半島情勢はこのところぎくしゃくしており、当時の和解ムードはいまや見る影もない。やらせでもいいから「統一!」のかけ声で乾杯できる日はずいぶん先送りされてしまったようだ。

【解説】
 2000年の南北首脳会談は和解ムードが高まり、記念グッズも多数販売された。写真は金大中大統領と金正日総書記の写真をあしらった携帯電話のストラップ。公式グッズではなく道端の屋台で売られていたもの。現時点で最後の南北首脳会談は2018年の文在寅大統領と金正恩委員長によるもの。この年は4月、5月、9月と3回も会談が行われたが、2000年当時のような盛り上がりには欠けていたようだ。おそらく首脳会談グッズも出回らなかったのではないか。

(初出:The Daily Korea News 2010年5月24日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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