むかし書いた韓国コラム #213

 「乗せてあげればいいじゃない」「最近は規則が厳しくて」――。住宅地を走るマウルバス(ミニバス)の乗客と運転手の会話だ。バス停を出てすぐに信号待ちとなり、乗り遅れた客がドアを叩いて乗せてくれと求めたのだが、運転手は手を横に振り次のバスに乗るようにと指示する。

 大通りを走る一般のバスと違い、住宅地の細道を縫って走るマウルバスは、運転手も乗客も顔見知りが多く庶民的な雰囲気にあふれる。以前ならバス停から少しばかり離れたところでも乗せてくれ、こうした人情味も韓国らしい風景だった。しかし最近は規則を盾に乗せてくれないことが増えた。

 「世知辛い世の中だねぇ」「オレも乗せてあげたいけどさ、いろいろとうるさいんだよ」。どこでも乗せてあげる温かさは失われつつあるが、それでも運転手と乗客の会話が弾むほのぼのとした風景はまだまだ健在だ。

【解説】
 マウルバスは小型のバスで、助手席に座っても良く、地元密着型の緩さがあった。過去には渋滞が予想される大通りに入る直前に運転手が乗客に了承を求めた上で手前の細道に入って勝手にショートカットしたこともあった。大通りのバス停で待ってた客はどうなるのかはよくわからないが、大通りを走る幹線バスにはない自由奔放な感じがあった。

(初出:The Daily Korea News 2009年8月20日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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