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むかし書いた韓国コラム #632

 白い煙を噴霧しながら街中を走る消毒車。韓国人に言わせると「懐かしい風景」なのだそうだ。ところが実はソウルのど真ん中でいまも定期的に走り回っている。筆者の住む鍾路区の話だ。毎年この時期になると噴霧器を積んだ車が走り、車の入れない路地には噴霧器を背負った作業員がやってくる。それほど珍しい光景ではないだろうと思いながらフェイスブックに写真を載せたところ、在韓日本人からは「見たことない」、韓国人からは「懐かしい」という反応が寄せられた。

 鍾路区と言えば東京なら千代田区か港区あたりに相当するだろうか。首都のど真ん中で現役なのだから他の区でも走っていると思ったらそうでもないらしい。鍾路区といっても近代的なビルが立ち並ぶ地区ではなく、隣の区に近いちょっとくたびれた住宅街の話。そういえば街並みもちょっと古ぼけた感じだ。想像力をたくましくすれば、ソウルの真ん中でタイムスリップを楽しんだ気分になれそうだ。

【解説】
 コラムだからあまり過激なことは書けなかったが、消毒車が回ってくるとタイムスリップなどとのんきな気分ではなく、窓の隙間を通じて部屋の中に入ってくる消毒剤に殺意が芽生えたもの。道路に面した1階に住む悲哀かもしれない。後にマンションの8階に引っ越したら消毒車を目にすることもなくなった。いまならちょっと懐かしいという気分もわからないではない。

(初出:The Daily Korea News 2014年7月18日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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