むかし書いた韓国コラム #265

 韓国で飲食店が長続きしないのは、飲食店をいやしい職業とする考えが根強いため、飲食店で成功してある程度の資金が貯まるとさっさと店をたたんで違う事業に乗り出したりするためだという。そういう傾向のせいか、贔屓にしていた店がある日突然閉店していたということも何度も経験した。好きだった料理が食べられなくなるのは寂しいが、なじみの店主が成功してどこかで元気にやっているならよいだろう。

 自宅近くにある店舗物件は新しい飲食店が入っても1年ほどですぐ別の店に変わってしまう。あまりに高頻度で店が変わるところをみると、1年でものすごい稼ぎを得られる立地なのかもしれない。ということはまるでなく、住宅街の真ん中で客がまるで入らない立地なのだ。

 「いやしい職業」であることを覚悟して開いたはずの飲食店。店主はバラ色の未来を想像して開業したのだろうか。シャッターに貼られたテナント募集の張り紙を見るたびちょっと切なくなる。

【解説】
 その店舗を借りる前に、前に入っていたテナントはどんな商売をどれくらいの期間やっていたのか、周辺の客層は出そうとしている店のターゲット層なのか、それくらいのリサーチもしていないのではないかと思えるほど入れ替わりの激しい店だった。ただその住宅街にあるほかの店は長く続いているので、その店舗物件だけなにか呪われていたのかもしれない。

(初出:The Daily Korea News 2010年9月8日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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