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むかし書いた韓国コラム #12

 2012年12月19日。その日は氷点下10度と冷え込みが厳しかった。そんな中を取材と称し夕方からセヌリ党本部のある汝矣島界隈を歩き回っていた。第18代大統領選挙投票日。出口調査では朴槿恵候補のリードが伝えられ、午後9時には朴氏に当確が出た。午後11時に朴氏が党本部に来るという情報が入り待ち構えていたのだが、党本部前は取材陣と支持者の人波が押し寄せ姿を見ることはかなわなかった。その後光化門前広場であいさつをするというのでタクシーで先回りしてステージ近くに陣取り、日付が変わってからようやく当選を決めた朴氏の姿を目にすることができた。厳寒で手はかじかみ体の芯まで冷え切ったが、歴史的瞬間に立ち会えたことにささやかな喜びを感じた。

 国民向け談話で任期満了前の辞任を表明した朴大統領。当選直後に国民への第一声を発した光化門広場で、4年後に大統領下野を求めるデモが行われるとは皮肉なもの。あの日の希望に満ちた彼女の笑顔はもう見られそうにない。

【解説】
 はたして任期途中の朴槿恵氏を大統領の座から引きずり下ろしたことがその後の韓国社会にプラスになったのだろうか。諸手を挙げて文在寅政権の誕生を歓迎した韓国人はいまものその考えに変わりはないのだろうか。個人的に朴槿恵氏を支持していたわけではないが、この退陣劇はいまもなんかすっきりしないのである。

(初出:The Daily Korea News 2016年11月30日号 note掲載に当たり解説を加筆しました)

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