木箱記者の韓国事件簿 第32回 インターナショナルタクシーでも料金トラブル
タクシートラブルは枚挙にいとまがない。3年ほど前には仁川空港からのインターナショナルタクシーでやはり料金トラブルに巻き込まれた。インターナショナルタクシーは仁川空港からソウル市内まで定額で乗れるので料金トラブルは起きそうにないのだが、それでもトラブルは起きてしまうのである。
定額といってもソウル市内は3つのブロックに分かれており、当時の料金はAブロックまでが5万5千ウォン、Bブロックまでが6万千ウォン、Cブロックまでが7万千ウォンだった。当時住んでいたのは独立門駅の近く。駅で降ろしてもらえれば何も問題はなさそうだが、厄介なことにこの駅がある統一路はAブロックとBブロックのちょうど境界線になっているのだ。
空港のインターナショナルタクシーのカウンターでは独立門駅までならAブロックなので5万5千ウォンと案内を受けた。これまでも毎回5万5千ウォンだった。しかしこの時乗った運転手は延世大学前を通り独立門ロータリーを左折して統一路に入り駅前で止まると、「ここはBブロックだから6万5千ウォンだ」と1万ウォン高い料金を請求してきたのだ。「空港のカウンターでは5万5千ウォンの案内を受けた。渡されたカードにも5万5千ウォンと書かれている」と反論したが、運転手の言い分では「統一路はAブロックとBブロックの境界であり、鍾路区側で降りるなら6万5000ウォンだ」という。要は同じ道でありながら上り車線で降りるか下り車線で降りるかによって1万ウォン違うということらしい。これはおかしい。同じ統一路なのだから料金は5万5000ウォンだろう。大通りから路地に入ったなら6万5000ウォンでも文句は言えないが、大通りにいる限りは5万5千ウォンだ。私が素直に支払わないので運転手は空港のカウンターに電話をかけ事情を説明し始めた。そして私に電話が渡された。カウンターの担当者も「ミスがあったようです」と言い6万5千ウォンだと言い始めた。
ちょっと頭に来たので運転手に「西大門区側で降りれば5万5千ウォンなんだね」と確認した上で、「じゃあUターンして西大門区側で降ろして」と命じて車を出させた。ちなみに統一路でUターンができるのは隣の毋岳チェ駅の前。距離にして1.2キロメートルほど。折り返して2.4キロメートル、駅前で降ろされても横断歩道がないのでそのままロータリーを右折して独立門の前で降ろしてもらった。最初に止まったところからは直線距離で100メートルほどのところだが、タクシーは3キロメートル近く走ったことになる。メーターだったら結構な料金が加算されるところだが、Aブロック内ならどこまで行っても5万5千ウォンと言ったのはこの運転手だ。1万ウォンをめぐって余計な燃料を使わされるとは思ってもみなかっただろう。運転手は「日本人の知り合いはいっぱいいるがこんな日本人は初めてだ」とぶつぶつ。こちらも「こんな運転手は初めてだ」と言いかけたが、タクシーでのトラブルはいやというほど経験している。にっこり微笑んで「スゴハセヨ~」と見送ってあげた。
ちなみに当時住んでいた家は統一路から東に200メートルほど路地を進んだところにある。それまでは5万5千ウォンの料金でも運転手の好意で自宅前まで乗せてもらったことはあった。この場合には5千ウォンをチップとして差し上げていた。それですら「いえ、定額は5万5千ウォンですから」と頑として受け取らない運転手と会ったこともある。200メートル分はあくまで運転手の好意であるので、客である私から5万5千ウォンのまま200メートルだけ進んでくれと言ったことはない。今回のケースではトラブルになりそうな予感がしたので大通りで降りたのだが、それでもトラブってしまうのだからやってられない。定額料金でトラブルはないはずなのに。
この時はソウル市に苦情を入れた。担当者からは「確かに厳密に料金を適用すれば6万5千ウォンですが、独立門周辺地域であれば乗客の便宜を最大限に考え5万5千ウォンで構いません。不快な思いをされたとのことで、今後タクシー会社には改善を申し入れ、運転手教育をしっかりやるよう指導いたします」との回答を得た。ただ「厳密に」の意味がわからない。境界線が大通りの場合、車線によって異なる料金になるのが正しい規則なのかどうかはいまだはっきりしないままだ。
初出:The Daily Korea News 2017年3月6日号 note掲載に当たり加筆・修正しました。
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