むかし書いた韓国コラム #242

 自宅から最も近くにある店は電気屋さんだ。工事主体なのですぐ近くにあってもこれまでまったく縁がなかった。しかし居間の照明が故障したので初めて訪ねることにした。

 安定器の交換を依頼したところ、店のおやじは「簡単だから自分でやりなよ」と言う。安定器は1万5千ウォンと高くはない。しかし工具もないし素人が電気工事をするのは不安なので頼み込むと、「オレが行くと作業賃2万ウォンかかるよ」と笑う。なんとか頼んで自宅に連れてきたが、確かに簡単な工事で、10分ほどで終わってしまった。

 代金は3万5千ウォン。お金を出すとおやじは「2万ウォンでいいよ」という。それだと作業賃は5千ウォンにしかならない。それでもおやじは「たいした作業じゃないし、ご近所さんだからね」と2万ウォンだけポケットにねじ込んで帰って行った。なんと粋なおやじだろう。今後もひいきにしたいところだが、電気工事を頼むことはそうそうありそうにない。

【解説】
 下町の雰囲気が色濃く残る街に住んでいたおかげか、こういう人情味のあるお店には恵まれていた。思い出すだけで雑貨屋、肉屋、クリーニング屋、レンタルビデオ屋、床屋、不動産屋など顔なじみの店はいろいろあった。みんないろいろ融通が利くいい人たちだった。

(初出:The Daily Korea News 2010年11月2日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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