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むかし書いた韓国コラム #912

 プデチゲの醍醐味は煮詰まっていくスープにあると考える。最初はどちらかというと味が薄いプデチゲだが、煮詰まるにつれ辛さも凝縮され、具に入っているスパムやソーセージからダシが出てきてなかなかコクのある味に変わっていく。

 そんな講釈を垂れながらプデチゲをつついていると、店のおばちゃんがスープが少なくなりつつある鍋に気づいて気を利かせてスープを注ぎ足してくれた。おばちゃんには「ありがとう」と言ったが、これではせっかく育ててきたスープが一気に薄まってしまう。これを煮詰めるにはそれなりに時間がかかるが、大抵は好みの煮詰まり具合になるまでに具は食べ尽くされ、二次会に行こうという話が出てきて思いを遂げられずに終わることになる。

 「スープを注ぎ足すのは許せない」とプリプリしてると、「おまえとメシを食うとめんどくさい」と言われた。こういう「こだわり」というのは韓国人にはあまり受けが良くないようだ。

【解説】
 プデチゲに限らず、鍋料理は煮詰まったスープがおいしい。そこにスープを注ぎ足されるのはありがたくもあり迷惑でもある。こうした悲劇を避けるためには、鍋が煮立ったら火を弱め、なおかつダラダラと食べるのではなく速やかに食べることで無駄にスープが蒸発するのを避けるべきである。こういう鍋奉行がいたっていいじゃないか。

(初出:The Daily Korea News 2010年10月4日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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