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定義を明確にする

数学というと、計算のイメージが強いかもしれません。確かに、小学校の算数では、たし算、ひき算、かけ算、わり算を中心に計算方法を主に習います。数学では、計算よりも、証明が重要になってきます。

数学が他の自然科学と異なることの1つは、明確に証明できる(証明しなければいけない)ところです。物理学では、オームの法則や万有引力の法則など、たくさんの法則があります。それらの正しさは、実験や他の法則からの計算で、検証はされますが、厳密には証明できません。例えば、質量保存の法則というのを中学校の理科で学びます。「物質の総質量は変化しない」というもので、中学校レベルの実験では成り立っています。しかし、相対性理論の世界では成り立たなくなります。成り立たないといっても、日常のレベルでは成り立ち、便利なものなので使われています。物理学者は、基本的な法則を見つけようとしていますが、現在、正しいとされている法則が、未来永劫正しいという証明はできません。

それに対して、数学では厳密な証明が求められます。数学は自然科学といいつつ、必ずしも実際の自然を相手にしておらず、体系化されたその中でのみ正しいものです。正しいかどうかを判定できないものは扱えません。そのため、言葉を厳密に定義します。

数学的に検討しようとすると、最初に定義を明確にする必要があります。定義というとむずかしく感じますが、「○○とは~」の「~」の部分です。例えば、「四角形をかいてください」と言われたとします。

どれが四角形?

(a)のような形をかく方が多いのではないでしょうか?(b)も四角形ですね。ここまでは、異論がないと思います。(c)は四角形でしょうか?少し意見が分かれてきそうです。ここで、定義が重要になってきます。四角形を「平面上で4本の直線に囲まれた平面の一部」とすれば、(c)も四角形になります。(ただし、定義によっては(c)を認めない場合もあるようなので、注意が必要です。)では、(d)は四角形でしょうか?先ほどの四角形の定義で考えると、ややわかりにくいですが、4本の直線で囲まれているともいえないので、四角形と認めないようです。「2組の頂点を共有しない対辺(向かい合う辺)をもつ」ということを四角形の定義に加えれば、より明確になります。

日々の仕事や生活では、定義があいまいなことも多いです。

母親が子どもに「部屋をかたづけて」といったとします。子どもは、ちらかっていたおもちゃを箱に入れたので「かたづけた」と思っています。母親は、絵本が出しっぱなしで机も元の場所から移動したままなので「かたづいていない」と感じます。「かたづいた部屋」の定義が明確になっていないことで生じるミスコミュニケーションです。このケースで、子どもに定義を明確に説明してくださいというつもりはありません。ただ、あいまいな会話だと、自分の定義と相手の定義が違うことはよくあるのは心得ておいた方が良いです。特にビジネスでは、定義は明確にしておかないと、後になって問題が生じることがあります。

他の例として、「幸せになりたい」と思っている場合、「幸せ」の定義を明確にするのは意味があります。辞書的な定義はともかく、自分が幸せと思っているのはどういう状態かです。「健康」「悩みがない」「家族となかよくすごす」「お金に困っていない」「ほしいものが手に入る」「やりたいことができる」……など、いろいろあるかと思いますが、それによって、幸せになるための方法が変わってきます。

定義が明確になると、それに対して、いろいろ検討することができます。定義があいまいだと、結局何をしたいのかわからなかったり、いろいろやった末に話がふりだしに戻ったりします。

「定義」は数学的思考法の最初の一歩です。定義を考えるだけでも、悩みの整理に役立つかと思います。

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