マガジンのカバー画像

旅の思い出

39
旅の記録のつめあわせ
運営しているクリエイター

#地理

シベリア鉄道の夜明け-ラストエンペラー-

北京駅発シベリア鉄道の、その先の話。 この北京駅へたどり着く前には、こういう船旅やこういう列車の旅があり、早朝に膨らむ高揚感があり、そうしてようやくクラシックなコンパートメントに腰を下ろす。 シベリア鉄道というとウラジオストクからモスクワ、という印象があるけれど、その一部はウラン・ウデで分岐してウランバートルを経て北京へとつながっている。 私たちが目指したのはモンゴルの首都ウランバートルで、そういう意味ではシベリア鉄道には乗ったものの、「本当の」シベリアの大地を走ったわけ

偏西風のしわざ-太陽と月に背いて-

古い手紙やカードや、色々書類の束を繰っていたら、北京発ウランバートル行の列車の切符が出てきた。 もう7年前の夏の日付だ。 レモングリーンの毛羽立った紙面には、私には解読できないロシア語と、大学で少しかじったドイツ語が印字されている。 英語はない、「東」の匂い。 それは、シベリア鉄道の乗車切符。 まだ外が真っ暗なうちに起き出して、私たちは北京駅へ向かった。 深い緑色の車体は重量感がある。 古く、ごつい、鋼鉄のかたまり。 私の大学4年の夏の旅は、中国とモンゴルだった。