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2.5次元舞台で劇伴作曲家・和田俊輔が書いてきたもの

どこかにプロフィール
というかバイオグラフィ?
的なものを書いておかなくちゃなと思っていたのです。

大学を卒業した年がちょうど2000年。
すぐに作曲の仕事についたのでキャリアは意外に20年。
音楽1本で食べられ出したのは29歳くらいから。
東京へきてたぶん今、10年め。
劇伴にハマりにハマり、小さい頃から大好きだった舞台の世界で
今日も日々音楽を書き続けている。
まだまだまだまだ下っ端ですが、恵まれた毎日です。

そして時代は変わり、
「2.5次元」と呼ばれる概念の誕生。
からの「2.5次元ミュージカル」「2.5次元舞台」という
新しい文化の誕生。

「2.5次元○○」は通常の舞台作品より音楽の比重が重い。

ある日ぼくは突然ネルケプランニングの松田さんから
『演劇ハイキュー!!』という作品の、
音楽担当に抜擢していただく。
明らかに人生のターニングポイントとなった、2015年。
(ほんとうにこれは幸運としか言いようがない。。)

当時、まだまだ結果の出し切れていなかった自分、
舞台業界の片隅で
誰も書かないようなニッチな音楽を書いていたぼくは
突如この大型メジャー演劇作品で
たくさんの方々の耳に触れることとなり、
そうして今もなんとかかんとか
たくさんの大好きな舞台作品に関わらせていただいている。

もちろん2.5次元のキャリアがぼくのすべてではないのだけど
今日はここにフォーカスをあてて過去を少し振り返ろうと思う。
和田俊輔バイオグラフィ2.5次元編。

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まだ2.5次元という概念のなかった2009年末、
亡き今敏監督のアニメーション映画『千年女優』という傑作が、
天才・末満健一さんの手によって舞台化される。
思い起こせば自身初めての2.5次元音楽担当作品。

2.5次元舞台の曲を書くときにいつも大きな障壁となるのが、
「既にだれかがこの作品の曲を書いている問題」だ。
そんなもの気にしなきゃ良いじゃない!
って思うけど、思う時点で負けてる。
「聞かなきゃ良いよね( ・◡・ )」って思って
あまり調べないようにしている時点で、
もうガンガンにギャンギャンに気にしてる。

本作はよりにもよってあの鬼才・平沢進さんが音楽を書いた作品だ。
あの生きる伝説のデスゾ。

当時はまだまだ周りに噛みつくくらい血気盛んだったので
ボロ負けなのに「おれはおれの音楽を書く!!!」
と息巻いて書き殴ったと思う。
とはいえ今聴いても、おれはおれの音楽を書くって感じの音楽で、
なんだか潔い。
やっぱ若いってステキだな(o^^o)

よりくわしくはこちらをどうぞ。

時は同じく2009年。
東京での2つめの作品。
それがあの「黒執事」を舞台化したものだった。

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原作の枢先生は黒執事はもとより
今やツイステの原作としても大活躍されていらっしゃるし
脚本・演出をされた浅沼さんは超大人気声優さんとなり
多方面でマルチな才能を発揮されている。
主演を努めた松下優也くんはその後もずっと
舞台の第一線で活躍をされている。
つくづくモンスター作品と出会えたものだ。。感慨深い。

この頃はまだ2.5次元舞台音楽のメソッド的なものも確立されておらず
(概念すらないんだから当然だよね)
たまに「当時のDVDを観た!!」
という人のつぶやきを発見するのだけど、
今では考えられないくらい音楽(曲数)が少ないらしい。笑

今は2時間半の作品だったら
2時間15分くらいは音楽を書いているから、ね。。笑
超娯楽ファンタジー作品に振り切っているのが
最近の(自分の)作り方だと定義すると、
この頃はまだ純粋なストレートプレイと漫画の絶妙な融合地点はどこか。
それを大いに探っていた時期なんだとも思う。

ぼくはその後
ミュージカル「黒執事」〜NOAH'S ARK CIRCUS〜(2016)
ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-(2017)
の2作品を担当させていただく。
黒執事、また書きたいな。

ときはとんで2015年。
冒頭でも書いた演劇ハイキューとの出会いがぼくを待っていた。

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これはもうライフワークと呼んでよいでしょうか、
いや呼ばせてください。
もちろん原作が既に連載終了しているので演劇ハイキューにも
なにかしらのピリオドがくるかもしれない。
テニミュのように永遠に続いてゆくかもしれない。
どうなるのかわからないけど
(いや、ほんとにしらないのよ( ;´Д`))
もうね、自分の中から絞って絞って絞り尽くして
それでも全然足りなくて
全力で汗かいて魂けずって200曲300曲?くらい書き続けてきた5年間。
演劇ハイキュー、これまでの全作品。
ここに自分のやりたかった音楽が流れてない、
なんてこと・・ありえないよね。

2.5次元音楽のあるある障壁その2は、
その分量の多さ、だ。
冗談抜きで本当に2時間15分くらいの大長編音楽を
毎作品コツコツと書いている。
なんだったらいつのまにか
ラジオドラマみたいなものまで作れるようになってきた笑。

また制作時間が潤沢にあるんだったら良いけど
まあ。。難しいよね。。( ;∀;)

というわけで絶えず制作時間と分量、
そしてアイディア量との戦いになるのだが、
なにを隠そうそういうふうに2.5次元舞台の音楽界を変えていくんだ!
と息巻いたのが当の自分なのである。。
自分があたかもそういう「情報量の多い作品」がスタンダードのように
舞台作品をいくつもいくつも作り込んできてしまったので、
今なお自分の作った世界(メソッド)に苦しめ続けられている、
のである。。
あはは。。。

演劇ハイキューについてもっとくわしくはこちらです(o^^o)

演劇ハイキューを皮切りに

ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」
東京ワンピースタワー
「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage
舞台「鬼滅の刃」
乃木坂46版 ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」
舞台「パタリロ!」
浮世戯言歌劇『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』
ライブ・ファンタジー『FAIRY TAIL』
ミュージカル『バイオハザード』 〜ヴォイス・オブ・ガイア〜

などなど、、
びっくりするほどビッグタイトルを担当させていただきました。
最後にこの作品で
和田俊輔バイオグラフィ2.5次元編を締めようと思う。

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2.5次元の、今や頂点と言って良いのかもしれない。
かの、「刀剣乱舞」。
その舞台版は冒頭でも登場した末満健一さんが脚本演出をつとめ、
ミュージカル版では繊細かつ強い説得力のある演出にいつも唸らせられる、
茅野イサムさんが演出を担当されている。

ぼくはなんというか本当にこれも幸運にも、
2019年に開催されたミュージカル『刀剣乱舞』 歌合 乱舞狂乱
というコンサートと芝居を融合した一大イベントで
大事な楽曲をかかせていただくこととなった。

2.5次元音楽。3つめの大きな障壁は、
社会現象までおこしているコンテンツの曲をどう書くのか、
という特大の問いだ。
原作があるということは、
1人1人のファンの方々の中に「これが正解」というものがあるということ。

また、社会現象を起こしているということは、
もはや想像をはるかにこえた無数の「大正解」が
この世に存在しているということ。

もう、全員に納得してもらえる作品(楽曲)なんて
ありえないんじゃないだろうか。。。
と鍵盤の前で平伏すのです。。。( ;∀;)

とにかく自分がコンテンツの強烈なファンにならなきゃはじまらないし
ファンの方々にせめて追いつけるくらいの強烈な原作愛がないと
圧倒的な曲はかけない。
どんな2.5次元作品を書くときもその姿勢はかわらないけど
とくにこういう巨大コンテンツの前では気持ちの帯を引き締めなおす。

原作を愛して愛して愛して愛したあとに
「自分だったらこう思う」
っていう曲をポロっと書く。
できるだけ自分のエゴは入れない。
入れるのは「自分だったらこう思う」これだけだ。

そうして書いた初めての刀剣乱舞の楽曲。
自分でも大変にお気に入りだが、
たくさんのファンの方々にも受け入れてもらえて涙がでるほど光栄だった。


そんなこんなで
単に自分のバイオグラフィ2.5次元編を書きたかっただけなのだが
最後に刀剣ミュの話をもってきてしまったもので
なんだか胸にくるものがあった。
2020年10月。
世界はまだまだコロナ禍で、舞台はきびしい世界線にいる。

それでも
#頑張れ刀ミュ
というハッシュタグがトレンドを賑わしたことは
ぼくはとてつもなく嬉しかった。
次の3年、5年、10年にむけて、
まだまだ走り続けたいと思う。

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