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船旅で耳にする「御船印」の登録商標が2つ!異なる2人の商標権者!気になる早期審査の背景

今年2023年の商標学習事例として挙げます

御船印とは

神社仏閣で購入する「御朱印」の船版のような紙です。販売当初は300円/1枚でしたが2022年以降は500円/枚販売が平均価格帯。
これらのコレクターが少なくとも数百人はいることが有限会社ディスクマイスターのwebsiteから確認できます。主に船の乗船場で販売されています。


「御船印」商標権が2つ。商標権者は異なる

まずこれらの情報ですが、特許庁による公知情報で確認できます。世界の誰でも自由に無料で閲覧可能です。同一の商標名称で2商標権者いるのがかなり異例。以下情報は公知情報です。商標出願を個人で行う場合は自宅住所を指定しないよう留意しましょう。自宅でなくても例えばバーチャルオフィスの住所でもOKです。

1人目の商標権者 小林 希 氏


商標登録6335363 (引用元:特許庁 j-plat-pat)

2人目の商標権者 有限会社ディスクマイスター


商標登録6741605 (引用元:特許庁 j-plat-pat)

代理人弁理士は同一人物

商標は通常、出願から登録まで最短でも8カ月程度は要します(コロナの時は1年超えてました)。
この商標は出願からわずか3カ月で登録に至っています。
早期審査に関する事情説明書」を2020年10月15日付で特許庁へ提出。「早期審査に関する報告書」を同年11月17日付で同庁へ提出。
この一人目の商標権者の「御船印」で興味深いのは、2021年2月7日付で「ファイル記録事項の閲覧(縦覧)請求書」の提出を受けている点。一人目の商標権者の商標は特許庁から拒絶理由通知もなくストレートで商標登録に至っています。

そのため「ファイル記録事項の閲覧(縦覧)請求書」を提出した人物(おそらく2人目の商標権者?)は、早期審査に関する事情説明書」と「早期審査に関する報告書」の内容が知りたかったと思われます。

代理人無しでも出願は可能ですが、先の商標件者が鶴若 俊雄先生(事務所名:鶴若特許事務所)を代理人とし委任関係を締結しているので後の商標件者も出願の際にそうせざるを得なかったであろうと推測されます。

小林希氏は商標2区分で出願しており通常料金では98,000円ですが、早期審査対応で+αの代金が発生しているはずなので100,000円以上の権利化コストが発生したと思われます。代理人との委任関係は現在も継続中のようなので次回登録更新時に登録更新手数料を代理人へ支払うコストが見込まれます。

じゃあ解任すればいいじゃないか、ですがこの2商標権者案件は結構特殊なので代理人とは委任関係継続の方が無難な印象です。要は有事の際に係争へ向けて弁護士を別で委任することが想定されますが小林希氏個人対応よりは専門家に入ってもらっていたままのほうがよさそうです。

御船印のプロジェクトは有限会社ディスクマイスターが通常実施者のようだけど

このプロジェクトのメインの商標権利の範囲は小林希氏が権利を有しています。有限会社ディスクマイスターとしては自分たちの商標権とストレートに言った方が登録商標の明示も楽だし、係争時も自分たちが主体で動けますが小林希がこの御朱印プロジェクトのメインの権利範囲の商標件者なので現場ではやりづらそうな印象です。その辺ライセンス契約書で整理済と思われますが、小林希氏が早期審査をした背景は何でしょうね。高リスクな内容がある時しか一般に早期審査はしないです。

「ファイル記録事項の閲覧(縦覧)請求書」


僕は本件開示請求していないので早期審査の背景はわかりません。法人番号を持っている人は特許庁のソフトをインストールし無料で閲覧できます。法人番号を持っていない人は有料で、かつ特許庁へ行くと紙ベースで資料を開示してくれます。

自分がSNS等”業として”御船印の商標を使わざるをえないときは、商標登録権者がいる旨を明示

この御船印は前述の通り商標権者が2人います。が権利範囲はすみわけしています。
こちらも前述の通りいわゆる御船印の役務は小林希氏のもつ権利範囲が多く該当しています。他グッズは有限会社ディスクマイスターが権利範囲を有している、と思われます。
この2名の間のライセンス契約を我々第三者は知らないので両名を商標権者として記載するか、よくある「商標権者に帰属します」のくだりを表記で一言かいておけば明示の義務は果たしているといえます。少なくとも大手企業のプレスリリースに倣う限りこれでリスク回避は十分かと思われます。



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