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#2 小学校受験の選考ステップを紐解く[無料公開]

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 お受験入門編第二章。本noteでは、「#1 お受験の縁故(コネ)・フリー・属性とは?」で触れた、お受験の「選考ステップ」についてお伝えして参ります。
 私立のお受験幼稚園・附属幼稚園・小学校受験(以下:お受験)の選考の構図を紐解くことで、ご家庭を見極めた戦略の重要性、「あんなに出来る子が不合格」の正体をご理解頂けると思います。


■お受験は相性

 お受験は原則「我が校に合うと思った家庭(お子様)を選抜する」加点方式です。ダメな家庭(子供)を落としていく減点方式ではありません。「受かるのに理由はあるけど落ちるのに理由はない」と言われるのもそのためです。
 その理由は私学の創立を振り返れば紐解けます。私立小学校はその独自の教育方針に賛同してくれる家庭が集う学校です。キリスト教系の学校であれば宗教教育への理解が問われます。
 その理解がなければ学校と家庭、学校と子供のミスマッチが起きてしまい、幼い子供が不幸になります。学校は子供のために、安定的な学校運営のために徹底的にそのミスマッチを避けようとするのです。
 そのミスマッチが少なそうなご家庭を「相性が良いご家庭」として学校は選抜します。その選考の構図が下図になります。

■お受験の「選考ピラミッド」

お受験の選考ピラミッド


①身元確認

 「家庭の身元確認」、分かりやすく言えば「我が家はこういった素性の者です」を伝え、「このご家庭ならば、つつがなく学園生活を送って頂けるだろう」と判断してもらうのが、この「身元確認」のステップです。
 詳しくは、「#1 お受験の縁故(コネ)・フリー・属性とは?」をご覧下さい。

②親の資質(属性、教育方針、志望動機)

 次に「親の資質」のステップです。
 学校への理解度は、例えば宗教教育の学校であれば学歴や宗教への関わりから宗教教育への理解を、別学校であればご両親の経歴から別学への理解を推し量ります。そもそもの私立小への理解がどの程度かも、現在の幼稚園や通っている教室、両親がどこかの私立小出身であるかを見れば一定の予測はできます。
 貢献とは、属性から推察される今後の学力、寄付金や母校の名誉(将来に著名人、有名選手となる)などの可能性から、つつがなく我が学園の一員になって頂けそうなご家庭だろう、というシンプルなものまで十分な幅はあります。4番バッターだけでは勝てるチームができないのは組織の常です。派手なご経歴のご家庭だけがここを通過するわけではありません

 また、身元確認の次がお子様の考査でなく、親の資質であると申し上げる根拠は、下記の一言でご理解頂けると思います。
 「この親御さんのお子様なら見てみたい。お預かりしてみたい。」

 親の資質は家庭の姿とも言えるでしょう。「お子様にどんな人間になってほしいのか」「そのためにどんなことをしてきたのか」「これからどんな教育を授けたいのか(なぜ我が学園なのか)」と、学校が知りたいのはこの3点です。
 それらに共感を得られれば、学校はこのご家庭と一緒に教育をしてみたい、このご家庭のお子様を見てみたいと思うのです。

 奇しくもコロナ禍がそれを証明してくれました。子供の考査をなくして親子面接と願書(論文)だけになった2020年秋の田園調布雙葉小学校附属幼稚園をはじめ、軒並み多くの学校で行動観察や体操など、集団での子供の考査が省略されました。

 「この絞られた考査で本当に子供を見てくれているのか」「結局、縁故が強くなっただけではないのか」と気を揉まれた、コロナ禍の受験生の親御さんの心労は察するに余りありますが、学校はこれまでと何ら変わりなく、正当に選考していると自負されていると存じます。
 願書、面接を通じて親御さんの資質を確認してからであれば、多少の材料の減少はあれど、お子様の姿を見るには十分な考査であるということでしょう。

 2022年秋の考査においては、多くの学校で行動観察をはじめ子供の考査は戻ったようです。
 しかし、これで「子供を見てもらえるようになった!子供を鍛えなければ!」と考えるのはコロナ禍の経験が活かされてません。
 あくまで属性、親の資質の2つのステップを通過することが前提なのは変わりありません。

③本人(子供のポテシャル)

 最後のステップでようやく本人の登場ですが、相手は3歳児から6歳児です。考査の瞬間の作られた姿だけで判断できないことを学校は分かってます。だから学校側は、どうにかしてお子様の本来の姿を見ようと、あの手この手で考査を行うのです。
 新卒の大学生ですら、将来性に期待して採用します(時代は変わってきてますが)。「未就園児、未就学児の考査は、究極のポテンシャル採用」です。
 「親御さんの子育ての姿が見える」「この話を聞く姿勢は学力が伸びそうだな」、学校はそのような目線でお子様を見てます。
 キョロキョロしたり落ち着きのなくペーパー90点の子と、姿勢良く先生の話を最後まで聞いてペーパー80点の子。どちらにポテンシャル(伸びしろ)を感じるかは、皆様が良くお分かりかと存じます。皆様が先生のお立場でしたら、どちらの子と授業をしたいでしょうか。

 子供の考査については、そこで合否が決まるという認識よりも、それぞれの学校が重視している性質の合格ラインを超えていれば良い、と考えて下さい。言い方を変えれば、どんなに出来る子と言われても、学校が求めている性質が合格ラインに届かなければご縁は頂けないということです。
 それも含めて、返す返すも合否の決定は学校と家庭の相性です。家族の姿を見極めて志望校を選択する戦略は非常に重要なのです。

 実力校、いわゆるペーパーを重視していると言われる学校群があります。詳しくは別のnoteにまとめますが、その学校群を志望した際に陥るのが、親の属性と資質を軽視することと、ペーパー偏重の受験対策です。悲劇をもたらす可能性が高く、その傷が最も深くなるのがこれに陥ったご家庭です。
 例えばその中の一つ、暁星小学校にしても数年前から一次考査に体操(という名の行動観察)が含まれたのはご承知の通りです。実力校と言われる学校群が他校に比べて学力を重視するのは否めませんが、それだけでは決まりません。
 ペーパーでの足切りラインが高く設定されている、という認識に止めるべきです。

■「あんなに出来る子が不合格」の正体

 したがって、「お子様の失敗を親がカバーする」ことはあれど、「親の失敗を子供がカバーしてくれた」という結果はありません。お子様がカバーしてくれたと感じた時、親御さんは失敗していません。属性、親の資質で学校の心を掴んでいたということです。
 「あんな子なのに合格…」というお受験でよく聞く噂は、このように紐解けば理解できます。親御さんに確固たる属性と資質があり、お子様もその学校が求める性質においては十分に魅力的だったということです。
 タイトルの「あんなに出来る子が不合格…」という噂も紐解けます。それだけ出来る子であれば、親御さんの属性と資質が学校と合わなかったということです。もしくは、学校が求める性質においてはお子様が合格ラインに届かなかったのかもしれません。高倍率校はともかく、併願校でそれが起きた場合は、厳しい言い方ですが戦略ミスと言えるでしょう。

■おまけ(国立小学校の選考)

 家庭との相性抜きで全ての子供をチェックしてくれるのが国立小学校です。ただし、その膨大な人数を見るために超スピードの減点方式となります。トラブルのあったグループは全員が一斉に減点です。教育研究機関として、穴のない優等生を残すイメージと言えば分かりやすいでしょうか。学習発表の場面も多いので積極性も含めた姿勢・話を最後まで聞くなどの態度は特に重要です。
 学校に合った家庭(子供)を取る私立と、失点のない優等生を取る国立。両方を志望するご家庭はその違いに留意しておいて下さい。

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