シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

 先日、やっとのことで映画館で観てまいりました。「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」でございます。本当は公開初日に行きたかったのですが、いろいろ事情があって出遅れたという感じです。しかし特にネタバレを目にすることもなく、無事100%楽しむことができました。そうです。もう結論を言ってしまいますが、凄い作品でした。というか凄い映画体験をしました。これ単体でということでなく、今まで観てきたエヴァンゲリオンという一連の作品の締めくくりとして、想定していたこちらの期待を大幅に上回る内容、まさかそこまではやらないだろうと思っていたところにガンガン踏み込んでいく内容で、私はリアルタイムで観ていたわけではなく、テレビシリーズも深夜まとめてやっていた再放送で、旧劇場版もビデオで、新劇場版もアマゾンプライムでまとめて観たいわゆる後追い組なわけですが、そんな私でも凄いものを観たと感銘を受けたので、リアタイ組の方の感動はいかばかりかと思います。

 はじめにことわっておきますが、私はそんなにエヴァのファンというわけでもなく、アニメにも詳しくないので、普通の映画ファンが観た感想と思って読んでいただければ幸いです。あ、あとネタバレ全開で書きますので、未見の方はお気をつけください。

 映画はQがそうであったようにいきなりアクションシーンから始まります。あまりの目まぐるしさとスピード感と、もっと言うなら状況というか基本的な情報もないまま映ったものを解釈していくしかないので、いろいろ理解が追いつかず「凄いなあ」と眺めることしかできない、あの感じのアクションシーンです。もはやアニメのアクション演出の極北と言ってもいい感じになっています。いつもながら奇抜なデザインのメカに驚かされるとともに、そのデザインがどのように動くかという部分を詳細に描くことで説得力が出てくるところに、何とも言えぬ面白さがあります。こういうところがエヴァの真骨頂なんじゃないかなと思います。

 一連のアクションが終わるとじっくりとしたドラマパートが始まります。シンジとアスカと綾波(じゃないんだけど)の三人が、インパクトを避けて作られた村のようなところで生活するのです。ここで懐かしい面々と会ったりします。トウジとヒカリが結婚していたりするだけでなんかグッとくるものがありますね。ここで時間をかけているのはもちろん綾波が人間としてのあり方を学ぶのと、シンジが立ち直るのを描くのに必要だからでもありますが、それらと並行して映画としてのあり方をもう一度基本に立ち返って一つ一つ再確認しているようでもあります。じっくりと言っても無駄な描写はひとつもなく密度が濃い時間になっているので、退屈するということはありません。またリアルかというとそうではなく、キャラクターに対して用意された世界であることは変わりないので「ああエヴァだなあ」という感じはします。決してペースが違うから「こんなのエヴァじゃない」という内容にはなっていません。この辺のブレなさ加減はさすがだと思いました。

 で、ゲンドウさんたちがついに最後の計画を進めるというので、シンジくんもすっかり立ち直って、ミサトさんたちと合流してクライマックスになるわけです。ここからの流れは、今までやってきたことの語り直しであるのですが、さまざまな解釈ができることで話題になったこのシリーズの総括をするように、そこまでやるのかというくらい分かりやすく噛み砕いて語られていきます。ここまでやれば誤読の余地はないだろうというくらい全て語ってしまいます。本当はこんなことをしてはいけないんですよ。特にゲンドウの心情の吐露とか、キャラクターの神秘性を剥ぎ取ってしまっています。それをあえてやっています。観た人がさまざまに解釈することで社会現象になるまでのムーヴメントとなったエヴァの落とし前の付け方として、解釈の余地がないほど正解を曝け出してしまうというのは、凄まじい腹の括り方だと思いました。それを観て私は、「ああ、もう本当に終わりなんだな」という感じがして、寂しくなってしまいました。あれだけ巨大な壁というか、圧倒的な存在だったゲンドウ氏がどんどんちっぽけになっていくのは、イコール、シンジがそれだけ成長したということなんでしょうね。

 エヴァンゲリオンという作品はとにかく始まりから理不尽な展開の連続で、それはシンジのような人間にとって世界はこう見えるというのを描いていたのであって、気持ちの持ちようが変われば、世界も変わるわけです。そして最後には本当に変わってしまいました。ラストの駅はあの世界が復興して平和になった世界という形跡が見えず、現実の世界そのままに見え、そこにシンジたちがいきなり存在しています。あの駅は手書きなんだかCGなんだか実写なんだかわからない感じが、技術的にも凄いと思いました。ただちょっとずるいなと思ったのは、当たり前のようにシンジとマリが一緒にいることで、それエヴァ世界の設定を現実に持ち込んでるじゃん、せめて百歩譲ってあの駅でまた一から出会い直してくれよとは思いました。

 まだまだいろいろ書きたいことはあって、書き割りのようなセットで戦うところの面白さとか、テレビ版の供養までしていたりするところや、林原さんが綾波なんだけど綾波じゃない人をちゃんと違うトーンで芝居していたりとか、女体の動きに対するこだわりであったりとか、まあ結局書いてしまいましたが、そういう細かいところにもいっぱい面白みがあって、密度の高い、全力で作られた映画だなあとしみじみ思います。面白いというよりも、圧倒されたというのが正直なところです。結局これでエヴァは終わりです、みなさん現実に帰りましょうということなんですけど、これがメッセージの押しつけではなく(そう感じた人もいるかもしれませんが)、私にとっては現実と向き合うエネルギーをもらったような印象を持ちました。だから観賞後には何とも言えない幸福感に満ちた気持ちになりました。本当に素直に、この作品に関わった人たち全てにありがとうという気持ちになります。庵野監督をはじめ、この映画を作って下さったスタッフ、キャストの皆さん、ありがとうございました。

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