007/ゴールドフィンガー

 先日、オナー・ブラックマンさんが亡くなられました。ご冥福をお祈りします。

 そんなわけで、彼女がボンドガールを務めた「007/ゴールドフィンガー」について書いていきたいと思います。007シリーズは最初から好調だったらしく、「007/ドクター・ノオ」も「007/ロシアより愛を込めて」(旧題「007/危機一発」)も好評のうちに迎えられたのですが、何と言っても人気が爆発し、シリーズのフォーマットが完成されたのはこの「007/ゴールドフィンガー」からではないでしょうか。一つの短篇アクション映画と言ってもいいアバンタイトル、そして女性の肌も露な姿をデザインしたタイトルバックというパターンが強力です。シャーリー・バッシーの歌う主題歌は007の代名詞と言ってもいいほどになりました。

 この「007/ゴールドフィンガー」は今でもベストに推す人が多いだけあって、アクションとストーリー、ドラマなどの要素がバランスよくまとまっていて完成度の高い作品になっています。様々な仕掛けのあるボンドカーが登場しますが、助手席の椅子をイジェクトするというあの有名なギミックをはじめとして現実的なものばかりになっています。何より一時期の無敵なボンドカーでなく、敵の罠によってボンドカーに乗っていながらもボンドが捕まってしまうというある意味ボンドカーが敗北してしまうという異例の展開が今見ると逆に新鮮です(ブロスナンボンドでノコギリによってボンドカーが真っ二つにされちゃうのがありましたが、あれは論外として)。

 お話はゴールドフィンガーと呼ばれる黄金大好きな悪党がフォートノックス襲撃計画を立てているのをボンドがいかに阻止するかというものですが、フォートノックスを襲って何をするかと言えば、そこに原爆を仕掛け、黄金を放射能まみれにして流通できなくさせ、自分の持っている黄金の価値を上げようという、意外性はあるもののもの凄く無茶な計画だったりします。しかしちょうどいい意外性と無茶さで、なかなか面白いです。このアイデアは「007/美しき獲物たち」にも、黄金をマイクロチップに変えて使い回されていました。

 ボンドカーのチェイス、レーザーによる拷問、武闘派ボンドガール、オナー・ブラックマンさんとのやり取りなど、見せ場満載のこの映画ですが、やはりフォートノックスを舞台にしたクライマックスのくだりが最高です。フォートノックス襲撃の集団戦のスペクタクル。正体がバレ、原爆とともに閉じ込められるサスペンス。そこから脱出しようとするも、今回の殺し屋役であるオッド・ジョブ(ハロルド坂田)が立ちはだかる格闘戦。特にこの戦いではただでさえ強いハロルド坂田が、刃物付き帽子という武器まで持っているという絶対的不利な状況にハラハラさせられます。この帽子の使い方も工夫されていてなかなか面白いことになっています。そしてその戦いを乗り越え、いかに原爆を止めるかというサスペンス。ある意味ここがボンド史上一番の危機だったのではないでしょうか。そして計画を阻止したあと、ゴールドフィンガーとの一騎打ち、と。この後半の構成はシリーズ中でも最もうまくいっていて洗練され、かつ娯楽映画的に申し分ないものとなっています。近年のボンド映画はリアリズム重視のためか、ラストが意外にあっさり終わったりしてそういう意味でちょっと物足りないものがあるので、この時代の良いところももっと取り入れてもらったら嬉しいなあと思ったりしています。

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