ジングル・オール・ザ・ウェイ

 さてそろそろまたアーノルド・シュワルツェネッガーさんの映画のことを書きたくなったので、「ジングル・オール・ザ・ウェイ」のお話をしたいと思います。なんでまたそんなものを、もっと先に書くものがあるだろう、と言われそうですが、そういった評価の定まっているものより、何となくみんなに知られていないものを書きたいというのが人情なので、このチョイスとなりました。今でこそシュワちゃんファンの間では隠れた名作との評価も聞こえてきますが、これ一時期は恐らくシュワちゃん主演の映画の中でも最も過小評価されている映画だったのです。

 かく言う私も友達に薦められるまでは観ようとも思わなかった映画なので偉そうなことは言えません。それまでもシュワちゃん主演のコメディ映画はいっぱいあったのですが、どれもこれもつまらなくはないのですが、「ああシュワちゃんを場違いなところに放り込んでそのギャップで笑わせるのね」とパターンが読めてしまうものばかりで、もうそろそろそういうのは観なくてもいいかなと思っていたのです。しかしあまり期待せずビデオを借りてきて本作を観てみたら、あまりの面白さに仰天してしまいました。もちろん制作者がシュワちゃんの個性をもてあそんでギャグにする類いの映画なのですが、そのもてあそび方がハンパではありません。

 物語はシュワちゃん演ずるパパが普段仕事で忙しくて子供の世話も出来ないものだから、せめてクリスマスの日のプレゼントくらいは買ってやろうと、今人気のターボマン人形を買おうとするのですが、様々な障害が立ちふさがり手に入れられず、挙げ句の果てに自身がターボマンに扮して町中で一大バトルを繰り広げるというものです。アホみたいな話ですが本当にそんな映画なのです。私が勝手にでっち上げたわけではありません。

 そんなわけですから、ちょっとしたハートウォーミングコメディだと思っていた私は、思いもよらない方向に展開していく物語にかなりエキサイトしてしまいました。まず中盤でサンタの後をつけておもちゃ工場を探り出し、ターボマンを手に入れようとする辺りからもうおかしいのです。うろ覚えなのでちょっと違っていたかもしれませんが、そうして工場だと思ったら実は犯罪組織のアジトで、そこに警察が踏み込んできて何やら無意味なスラップスティックになったりします。

 さらにクライマックスでは前述の通り、同じくターボマンを求めるライバルであったおっさんと、SFX満載の不条理なバトルを展開し、常人には不可能なアクションの末(もちろん納得のいく説明もありません)、見事息子の信頼を取り戻すという強引すぎるハッピーエンドへとなだれ込みます。

 観客が「おいおいおかしいだろ」と突っ込むのを完全に誘っています。しかし、そうとは気付かずに観ても、なんだか本当にハートウォーミングにも受け取れる巧妙な作りになっています。これ本当に面白くてお薦めなのですが、かつての私のように皆さんもシュワちゃんのコメディに食傷気味になっていたのか、公開時にはあまりヒットしなかったのですね。だから過小評価というよりただ単に観られていなかっただけなのかもしれません。そんなわけでおススメではありますが、本当にナンセンスな映画で、観た後に深い感動を得られたりとかはありませんので、そちらの期待はなさらないように。

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