ポルノ時代劇 忘八武士道

 さて今日は丹波哲郎さんの代表作「ポルノ時代劇 忘八武士道」について書いてみたいと思います。これはビデオで観ました。そして数年後に名画座でやっているのを劇場で観ました。監督は石井輝男さん、原作は小池一夫さんです。劇画や日本映画が好きな方なら、このメンツを見ただけで、大体どんな映画か想像がつくと思います。そして恐らくその想像は当たっています。ただしその想像の10倍は強烈な映画でしょう。

 丹波哲郎扮する主人公は明日死能(あす・しのう)という名の浪人です。本当にこういう名前なのです。ふざけているわけではありません。その死能がひょんなことから忘八者たちに助けられます。忘八者とは、外道の道にいきる輩のことで、人間に大切な八つの心を忘れていることからそう呼ばれています。で、死能もどうせ明日はない身、忘八者の仲間になることにします。そのためには八つの心を忘れねばなりません。この辺りの試験というか試練が何ともエログロナンセンスで石井輝男タッチです。

 しかし映画はこんなことでは収まりません。やっぱり忘八者は性に合わないと思った死能。しかし吉原をめぐって大規模な争いが起こり、忍者は出てくるわ、女忘八者は出てきて、裸になって転がって火を消すわで、なんだかよく分からないうちに死能は忘八者たちにとって邪魔になり、阿片漬けにされてしまいます。

 そしてついに最後のクライマックス、伝説となっている大スプラッタチャンバラが始まります。阿片で意識が朦朧としながらも、もともと命の惜しくない死能です。忘八者を相手に斬って斬って斬りまくります。血が飛び、腕が飛び、首が飛び、あまりの残虐ぶりに、逆に爽快感がわいてきます。アクションがどうという問題でなく、何と言うのでしょう、とにかくカタルシスがあります。これに匹敵するのは「ワイルドバンチ」のラストくらいではないかと思うのですがどうでしょう。さらにラストカット。雪が舞い、今までの殺戮からは信じられないくらい美しい映像で、この映画は幕を閉じます。

 最初に、私はこの映画は丹波哲郎さんの代表作と言いましたが、やはりこれは知られざる名作のままにして置きたい、そんな気もしてきました。しかしこういう物が観られないと、一般的には「大霊界」とかのイメージになってしまうのでしょうか。それもどうかと思いますが、あれはライフワークだったようで本人的にはそれで満足なのかもしれませんし、少し複雑な気もします。

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