サブウェイ・パニック

 70年代に数多く作られた良質のクライムサスペンスの中でも屈指の完成度を誇る「サブウェイ・パニック」をいよいよ紹介したいと思います。監督はジョセフ・サージェント。間違いなく彼のフィルモグラフィの中でも最高傑作と言える一本でしょう。後にリメイクされて「サブウェイ123 激突」という邦題で公開されましたね。そちらもいつか書きたいと思いますが。

 この映画はよく月曜ロードショーでやっていた記憶があります。まだ幼い私は犯人達がヒゲのお面をつけて同じような顔になっていたり、主役がウォルター・マッソーだったりということで、これをコメディと勘違いしてちょっとだけ観た覚えがあります。もちろんコメディタッチは随所に見られるのですが、その奥には一本スジが通った男の映画であります。後にビデオ屋さんでこの映画を見つけて、ちゃんと観ておこうと借りたのですが、音楽に合わせて「THE TAKING OF PELHAM 123」(原題)とタイトルが出るところでもう痺れてしまいました。カッコよすぎます。

 物語は簡単です。ペラム123という地下鉄が謎の集団にジャックされます。男たちは金を要求。ウォルター・マッソー演じる警部は、地下鉄なんかジャックしてどうやって逃げるつもりか、といぶかしみながらも、犯人グループと息詰まる駆け引きを繰り広げていきます。今にして見ると、「ダイ・ハード」等を見慣れた人には、この頭脳戦はかなり受け入れやすいと言えます。これは派手な爆発のない「ダイ・ハード」みたいなもので、犯人グループの計画、それを阻止しようとする鉄道側、警察の人員との息詰まるサスペンスは、脚本がよく練られていることもあって、最初から最後まで途切れることはありません。

 さらに犯人グループのボスのロバート・ショーがなかなかカリスマ性のある悪役を演じています。ラストはあっけないんですが、それだけに壮絶なものを感じさせます。そもそもアクションを売りにした映画ではありませんし、この時代の表現としてはこういうものでしょう。

 さらに言うならラストカットのウォルター・マッソーでしょう。さすがに最後の最後はネタバレを控えますが、逃げられたかと思った犯人を意外な手がかりから見つけた瞬間の、何とも言えないあの表情が最高です。とにかく全編通してよく出来ていて渋くてカッコいい映画で、70年代の映画でなんか面白いのないですかと聞かれたら、私はためらうことなくこの映画を推薦しています。

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