がんばっていきまっしょい

 唐突ですが、「がんばっていきまっしょい」のことを書きたいと思います。これを観た当時、私はフリーターで、毎日適当に暮らしていました。なんかCMで評判のなっちゃんこと田中麗奈が主演してる青春映画だということで、半分ネタのつもりで友だちをさそって劇場に観に行きました。そしたら、青春映画の傑作で、不覚にも涙がこぼれそうになりました。

 ところどころコミカルなシーンを入れつつ、でもちゃんとスポ根的な盛り上げも真っ正面から逃げずに描いています。それでいてさわやかです。女優さんたちが皆初々しくて、上手いとか下手とかでなくて見ていて微笑ましくなります。ロケの効果が抜群に生かされているのだと思います。ノスタルジーと郷愁とが、いい感じでブレンドされ、誰しも自分の青春時代を思い出すでしょう。リーチェさんの歌う主題歌もこの映画によく合っています。クライマックスのレースシーンでは、この主題歌がかかるのですが、私は実はそういう演出が嫌いで、なに音楽で盛り上げてんだよ、と思ってしまうタイプなのですが、不思議とこれは気になりませんでした。

 オープニングが現代から始まり、過去へと飛んで本編が語られるのですが、それが映画全体を遠い日の記憶のような、ちょっとしたファンタジーにしているのでしょうか。またガチガチのスポ根ものだと、相手に勝つということがテーマになってくるのですが、この映画では確かにレースを扱っているのですが、そういう競争は前に出てきません。いかに彼女たちが青春を謳歌したかがテーマなのです。ですからレースのシーンでも、相手校の様子とかは本当に最小限しか映りません。クライマックスはボートを漕いでいる彼女たちしか映しません。それでも成立しています。これはちょっと凄いことです。

 そして映画は現代へと戻ってくることなく終わります。これもうっかりしていると気付かないのですが、ちょっと普通はやらないことです。そもそも冒頭の古い写真から過去へと戻るのですが、誰が回想しているわけでもないのです。何年前、とか出さないのも潔いと思いました。2回目以降の鑑賞時には、このオープニングが、また違った感動を呼び起こします。そこまで計算しているのかどうかは分かりませんが、一度観終わった方は、もう一度最初から観てみると、またいろんな思いがこみ上げてきてさらに味わい深くなると思います。

 お父さん役の白竜さんが、出番は少ないもののなかなか好印象です。ヤクザ役ばかりやっている人というイメージでしたが、こういう普通の役をやってもハマりますし、何より無関心を装いながらも娘のことをちゃんと気にかけているという感じが伝わってきて見事です。

 と、べた褒めしてしまいましたが、この映画は本当に私のオススメですので、こういった方向性の映画が苦手とかでなければ楽しめるはずですので、ぜひご覧下さい。

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