ゾンビ

 今も大流行りのゾンビ映画の元となったと言っていいジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」について今日は書きたいと思います。厳密に言うならこれより前の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が現在の映画におけるゾンビ像を確立した作品なのでしょうが、日本で大々的にゾンビがデビューしたのはやはり「ゾンビ」でしょう。

 私の住んでいる地方ではお昼に「独占! 女の60分」という番組があったのですが、そこの映画紹介のコーナーでこの「ゾンビ」を紹介しているのを家族揃って見ていまして、じゃあ今度観に行こうかと即決して全員で映画館に行ったことを覚えています。映画好きな家族だったのですね。

 この映画、ホラー映画だと思って見たら、ほとんどアクションアドベンチャーなので驚きました。観る前は怖かったらどうしよう、とまだ幼い私は思っていたのですが、全く怖いところはありませんでした。グロいところは少々ありましたが、何故か平気で見れました。これは主人公がスワットの隊員だったからよけいにアクション映画のような気分で見れたのかもしれません。

 実際ゾンビを撃ち殺していくさまはワクワクします。映画的にどうというのは分かりませんでしたが、化物をやっつけたりするのって、子供だとよけいに本能的に好きなもので、私も例外ではありませんでした。ショッピングモールに立てこもるのもそうです。怖い映画のはずなのに、何故か楽しそうで、自分もこの映画の中に入ってバリケードを作ったり、売り場のものを好きなだけ調達したり、ゾンビ相手に戦ったりしたいと思いました。このように思わせる楽しさがあるところが、この映画を特別な物にしているのかも知れません。

 この平穏が破られるのが、ゾンビたちでなく、暴走族、つまり同じ人間によるものだということが、興味深いです。人間の敵は人間ということなのでしょうか。ゾンビという共通の敵がいてもなお争う人間の愚かさというものが垣間見えます。というのは大人になってから思ったことで、当時は小さかったので、そんなの気にしてなかったかも知れません。

 その後、成長してからも何度もこの映画を観ましたが、物質文明の虚しさを描いているとかいろいろ評論を読んで、なるほどとうなずくようになっても、やはりショッピングモールでサバイバルするくだりは楽しそうで、私も映画の中に入ってゾンビ撃ち殺してえなあという気持ちはいまだに持ち続けています。私だけでなく皆さんもそうなのではないでしょうか。だから未だにゾンビ映画が作られ、人気があるのだと勝手に思ったりしています。

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