インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

 せっかくなので現時点でのシリーズ最終作「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」の感想も書きましょうか。今回の感想はいくぶんヘビーになります。この映画が好きでネガティブな意見を聞きたくない方は読まないことをお勧めします。あと完全ネタバレしますので未見の方も読まない方がいいです。

 さて物語の舞台は1957年、つまり前作の公開から経った年月と同じくらいの年月が作中でも経った設定です。インディもすっかり歳を取り、なんだかアクションももっさりしています。例によって007のアバンタイトルよろしく、オープニングはアクションシークエンスで始まるのですが、これがエリア51を舞台に宇宙人の遺体の争奪戦という、ちょっと荒唐無稽すぎやしないかと思える内容なのです。実はこれが映画全編のモチーフであったりします。ソ連の超能力研究やアメグラ風のフィフティーズ描写、またレッドパージなど、当時の世相を描きながら、完璧にSFとも言える内容で、よく言えばスピルバーグの集大成なんですが、どうもごった煮感が強すぎる気がします。でもまあ、とりあえず頭から行ってみましょうか。

 ソ連の女将校に命じられ、宇宙人の遺体を探させられるインディですが、ここで遺体が磁力を帯びていることから、火薬を調達してバラまき、その金属粉の動きから倉庫内を探索するのですが、ここで「ああこうやって敵の弾薬を奪うのだな」とか「倉庫内が火薬だらけになるので、後々コレに引火させて脱出するのだな」とか思ってワクワクしたのですが、そんな展開は全くなく、力技でカーチェイス&銃撃戦&肉弾戦で切り抜けてしまいます。ここで私はあれ? と思ってしまいました。なんだか見せ場が淡白というか、行き当りばったりな感じがしてしまいました。さらに原爆実験に巻き込まれ、冷蔵庫に隠れてインディが助かるシーンでちょっと私は引いてしまいました。スピルバーグともあろうものが原爆に関して認識が足りないわけはなく、分かった上でやっているのです。つまりこれはブラックジョークの極みで、スピルバーグはいつも悪趣味なギャグをやらずにはいられない人ですが、その頂点とも言っていいブラックジョークです。しかし私は笑えませんでした。原爆をギャグに使うのはけしからんと批判するわけではありません。何をやろうと自由だと思います。しかし私の精神はそこまで自由ではなかったようで、やはりこれは笑ってはいけないのではないか、とブレーキがかかってしまったのです。あるいは私は本当に映画好きではないのかもしれません。このことに関してはまた後述します。

 そんなこんなで脱出して、いつものように授業シーンを挟んで、本題へと入ります。マットなる若者がクリスタル・スカルに関しての情報を持って来て、またそれをソ連軍が尾行していてといつものように追いかけっこが始まります。ここのバイクチェイスも何だかもっさりしていました。何だか文句ばっかり言っているようですが、正直言って私はこの映画をあまり楽しめなかったという結論をこの時点で明かしておきましょう。続く宝探しもなんだか退屈というか、説明がやたら多くてノリづらかったです。もっとこれまでの作品みたいにシンプルにならなかったのかなと思います。皮肉なことにこの作品がシリーズ中で一番真面目に宝探ししているんですけどね。

 宝を見つけた時点で敵に捕まるのもいつも通りで、まあそれはいいです。エルドラドに向かう途中のカーアクションもスピルバーグとは思えないほどの淡白さです。例えば森林伐採車がドーンと登場するのですが、そんなに印象的に登場したならそれに絡めたアクションがあると思うじゃないですか。ちょうど「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」で独特の構造をした戦車でいろいろ面白いアクションをやったようにです。しかしその森林伐採車はインディの発射したロケット砲でいきなり破壊されてしまうのです。そのノコギリ部分が飛んできて危なくよけるくらいの見せ場しかありません。その後のアクションもどうしてもこう、夢中になって見るという感じになりませんでした。車で並走しながらマットと女将校がチャンバラするところも、それインディにやって欲しいのにと思って観ていました。やはり寄る年波には勝てないのでしょうか。

 結局クリスタル・スカルは宇宙人の頭蓋骨で、それによって遺跡の扉が開き、宇宙人の英知を得られるということなのですが、私の勝手な思いなのですが、やはりインディシリーズとしてはちょっと荒唐無稽すぎるような気がします。もともと神話なり伝承が実は全部真実だったという立ち位置のシリーズではあるのですが、それはクライマックスに片鱗に触れるだけで、あとはもうそっとしておこうという奥ゆかしさがこのシリーズの魅力だったと私は思っていたのです。それが今回はちょっと電波的と言ってもいいほどトンデモな内容で、ちょっと一線を超えてしまった感じがします。さらに劇中で起こる神秘的な事象に対してインディがノーリアクションと言ってもいいほどのスルーっぷりで、どうにもお話が盛り上がりません。

 スピルバーグのファンかどうかというのを別にしても、若い人が普通にこの映画が楽しめているのだとしたら、恐らく私は歳を取ってしまって、純粋に映画が楽しめなくなってしまったのでしょう。若い頃はどんな映画も好きとためらいなく言えたのですが、今はそれほど映画好きじゃなくなったのかもしれません。そして年寄りが若者向けのエンターテインメントを理解できないように、私はもうこういう娯楽作品を楽しめなくなってしまったのかも知れません。もう昔観た面白い映画を繰り返し観て、最近の映画をくさして、ひっそりと年老いて死んでいけばいいのかも知れません。いささか大げさですが、インディ・ジョーンズシリーズの新作を楽しめなかったというのはそれほど私にとってはショッキングな出来事だったのです。

 そんなわけでネガティブな感想になってしまいましたが、決して手抜きで作られたわけじゃないとは分かるのです。それなりに力を入れてるんだろうなと思いながらも、自分的には楽しめなかったというところがショックだったのです。これでももっと文句を言いたいのを抑えています。ケイト・ブランシェットが魅力的に撮れてなかったり、ラストのUFO発進シーンのあのアングルはないだろうとか、お約束の虫シーンがCGすぎて萎えたりとか、結局書いてしまいましたが、まあそんな感じです。いつか再見した時に、面白いと思えたらいいな。

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