ラスト・アクション・ヒーロー

 アーノルド・シュワルツェネッガーさんのアクション大作「ラスト・アクション・ヒーロー」について、今日は書いてみたいと思います。これは確か「ターミネーター2」の次の作品で、こんなの撮っちゃってシュワちゃんこの後どうするんだろうと思っていたら、セルフパロディのような映画の主演をするとはなかなか面白いと思った記憶があります。でもあまり当たらなかったようで残念です。

 アクション映画大好きな少年が主人公で、彼があまり可愛くなかったのが当たらなかった原因かなとも思うのですが、まあそれはいいでしょう。シュワちゃん主演の架空の劇中劇「ジャック・スレーター」シリーズが大好きな彼が不思議なチケットを手に入れ、ジャック・スレーターシリーズ最新作を観ることになり、一人で観ていたら、その映画の中に入ってしまい、さらにその映画の中からシュワちゃんやら敵の悪党やらが現実世界に出てきて、大騒ぎになるという、プロットだけ読むと最高に面白そうな映画なんですが、ストーリーの方はこの魅力的な設定をあまり生かせていなかったような気がします。

 好きな映画なんですが、ぶっちゃけて言うとこの「ラスト・アクション・ヒーロー」という映画よりも、劇中劇の「ジャック・スレーター」の方を最初から最後まで観たかったよ、というのが素直な感想でもあります。そのくらい「ジャック・スレーター」が荒唐無稽でメチャクチャなアクション映画なのです。パロディなわけですから今までシュワちゃんが演じてきたアクションヒーローをさらにデフォルメしているのです。だからその内容をそのまま描く前半などは本当にメチャクチャ面白いです。アクション派ジョン・マクティアナン監督の手腕が爆発しています。しかし中盤から、凝った設定を説明しつつ、真面目にストーリーが展開し出すと、なんだか急にトーンダウンというか、ペースが落ちてしまったような印象を受けます。例えば映画から出てきたシュワちゃんが、怪我したりして現実とはこういうものかと驚いたりするところも、この映画ではそれがやりたいんだというのは分かるんですが、私としては、いやそういうの気にしないのがシュワちゃんのアクション映画のいいところだろ、と言いたくなってしまいました。

 そこまでダメな映画ということではないのです。ただ私の期待度に対して、カタルシス曲線が後半に行くにしたがって下降していくという構成なので、観終わるとちょっと物足りなさが残る気がします。前半にはもの凄い見せ場が目白押しだけに惜しいなあと思いました。例えば少年とシュワちゃんが出会ったところでのカーアクションなど、今観てもアクションの極地と言っていいほど完成度が高いです。「マトリックス」より前の作品なのですが、ワンカットの中で通常スピードからフィルムの速度を変えてスローになって不思議な感覚をかもしだす演出をすでにやっています。また危険なスタントやそれを生かしたカメラワークが見事で、まだCG合成が主流でない頃のアクション映画ならではの見応えがあります。

 当時のシュワちゃんとしては、アクションスターの頂点を極めてしまったので、同じことをやってもしょうがない、何か新しい方向へ行こう、ということだったのでしょうが、コメディやSFも得意としている人なのに、この映画だけは何だかいろいろな要素がまとまりきっておらず、散漫な感じになってしまったのは残念だと思います。あるいはマクティアナン監督がこういう題材にあまり興味がなかったのかなとも思ってしまいます。

 あまり関係ない話なのですが、私の友人などは後半の少年が銃を振り回すところで引いてしまい、この映画をいたく嫌っておりましたが、ああ、人によってはモラルとかいろいろ気になるところがあって娯楽映画を楽しめないことがあるのだなあ、と思いました。かく言う私もこの後の「トゥルー・ライズ」でキノコ雲をバックにしてのキスシーンで引いてしまったので人のことは言えませんが。

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