ドライヴ

 公開された時けっこう話題になったのですが、それに乗り遅れてしまい後日ケーブルテレビでやっていたのを録画しておいて観ました「ドライヴ」の感想を今日は書いてみたいと思います。監督さんはニコラス・ウィンディング・レフンさん、主演はライアン・ゴズリングさんで、私は当時どちらもあまり知らない方で、この映画で知った感じでしたかね。

 ライアン・ゴズリングさんは犯罪者を逃がすことを請け負うドライバーを演じます。「ザ・ドライバー」やさらに昔には「ラスト・ラン/殺しの一匹狼」など、探せばもっとあるでしょうが、そういう稼業を扱った映画でございます。冒頭でその仕事ぶりを描くのですが、ただ車をぶっ飛ばせばいいという感じではなく、警察の無線を傍受しながら、時にはスピードを落としたり、停まってみたりして、と冷静さやクレバーさを印象づけるようなシーンになっています。ちょっとこれはカーアクション映画としては毛色が違うぞ、と思いました。

 普段はカースタントのお仕事をしているライアンですが、同じアパートに住む女性と親しくなり、彼女が(というか出所してきた彼女の旦那が)ゴタゴタに巻き込まれそうになり、子供とも親しくなっていたので、いっちょ一肌脱いでみたら、あれよあれよと言う間にバイオレンスな展開に巻き込まれていってしまいます。

 まあお話の構成としては「シェーン」だと思ってもらえば分かりやすいかと思います。後半がかなりバイオレンス色が強くなり、主人公の凶暴性も露見してきて、件の女性に引かれてしまうという辺りが、この映画ならではの要素と言いますか、そこから先は北野武映画ばりの「死に場所探し」がテーマになっているのかなとも思えます。黒幕への伝言で「カエルは川を渡れなかった」と言うのですが、これがたぶん「クライング・ゲーム」という映画でも紹介されたお話で、サソリがカエルに川を渡りたいので背中に乗せてくれよと頼み、その間に刺さないでねというカエルに大丈夫だと請け合うのですが、やはり渡っている最中にカエルを刺してしまい、二人とも溺れ死んでしまう、それがサソリの性(さが)なのだ、というものなのですが、主人公の着ているブルゾンにもそのサソリがプリントしてあったりします。例え刺し違えることになってもやらずにはいられない性(さが)を表しているわけです。

 後半はちょっとドライバーであることがあまり関係なくなってしまって惜しい感じもするのですが、全体的にいい感じにまとまっていて好きな人は凄く好きな映画なんじゃないかなーと思いました。かく言う私はどうかと言いますと私の好きな要素がつまっていて特に欠点も見当たらない作品なのですが、なんとなくそこまで夢中にはなれない感じがあって、どうにも歯切れが悪い言い方しかできません。出来はいいと思うんですけどね。あるいはもっと若い頃に観ていたら人生を変える一本になっていたかもしれません。そういう意味ではタイミングが合わなかったのかなーとも思いました。映画って難しいですね。

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