見えない恐怖

 本日はリチャード・フライシャー監督のサスペンス映画、「見えない恐怖」をご紹介します。主演はミア・ファロー。「ローズマリーの赤ちゃん」の人です。彼女が盲人を演じます。まず冒頭が素晴しいです。エルマー・バーンスタインの軽快な音楽とともに夜の街をウェスタンブーツの男が歩いています。男のブーツしか映しません。そして車が男を追い越し、水たまりの水が男のブーツにはねます。車はすぐ近くで停まり、ミアを迎えに来た家族だと分かります。その間、男はその様子をじっと見ています。もちろんブーツしか映していません。それでも男が彼らをじっと睨んでいるのがよく分かります。もの凄い演出です。そんなこともあり、ミアが久しぶりに家に来て、乗馬等を楽しんだりします(お嬢様なのです)。しかし乗馬から戻ると、すでに一家は惨殺されています。早っ! と思うかも知れません。私も思いました。この映画はこの後ミア一人をいたぶるのに延々時間を使うのです。

 まずミアは盲目のため、死体を発見してキャー! ということにはなりません。あら、叔父さんいないのかしら、とかベッドに横たわっているのに触って、ああ寝てるのね、とか死体だらけの家で普通に日常生活を続けて行きます。この不気味な描写が凄いです。特に死体が入ったバスタブに知らずに湯を張るところなどは、もうブラックジョークの極みです。しかしついに死体の存在に気付き、彼女はパニックに陥ります。そして何者かの気配に気付いて逃げ出します。

 そこからはミアの地獄巡りです。久しぶりで不慣れな土地で、おそらく裸足だったと思いますが、寝間着のまま、盲目の彼女が沼地とかをさまようのです。「助けて」と叫びながら。しかし助けてくれる人などいません。そのまま延々と外をさまよい歩き、やっと誰かがいたかと思えば、ジプシーの人達。彼らジプシーは問答無用でミアを監禁してしまいます。もうこのあたりのミアの恐怖演技が凄すぎて、可哀相でたまりません。

 犯人はもちろんブーツの男なのですが、なんだかんだでちょっとしたドンデン返しもありつつ、最後にはなんとか犯人が見つかり、捕まって終わります。話をややこしくしたジプシー達の存在感がちょっと不気味だったりします。これ、ほとんど観られていないマイナーな映画なんですが、シーンごとのサスペンスや恐怖感というものを取り出すとかなり高レベルな作品です。全体として見たらちょっと強引なところもありますが……。一時は観るのが難しい時期もあったのですが、今はDVDが出ていますね。見かけたらぜひ借りるなり買うことをお薦めします。私はレンタルビデオで観ました。思えばレンタルビデオ店全盛期は宝の山でしたね。あの頃、いつでも借りられると思って借りようかどうしようか迷ってまあいいやと思って未見だった映画たちよ。今では容易に観られなくなったものもあるのが心残りでなりません。て、全く関係のない話ですね。失礼しました。

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