暴走特急

 スティーブン・セガールさんの人気が最高潮だったときの傑作アクション「暴走特急」について、今回は書いてみたいと思います。この映画は「沈黙の戦艦」の正式な続編で、主人公も同じケーシー・ライバックという男なのですが、日本の配給会社は別に続編でもない映画にいっぱい「沈黙の○○」という邦題をつけておいて、これには続編と分からないタイトルをつけるのですから、意味がよく分かりません。でもまあ「暴走特急」というタイトルはこの映画にピッタリですから、よしとしましょう。

 列車を舞台にテロリストが攻撃用人工衛星か何かをジャックして、アメリカを脅迫するみたいな筋立てだったと思いますが、その列車にたまたまライバックも居合わせて、彼らの計画をぶっ潰してしまうという、まあ前作同様「ダイ・ハード」形式の巻き込まれ型ヒーローアクションなのですが、いつも通りセガールさんが強すぎなのと、アクションが本当に矢継ぎ早に展開しますので、このジャンルの中でもテンションの高さは飛び抜けた映画と言っていいでしょう。

 とにかくテロリストたちが可哀想になってくるくらい、もの凄いやられっぷりで殺されていくのです。最初に血祭りに上げられたテロリストが確か、屋根にいるライバックを捜索に来て、ライバックに撃たれて、そのまま列車の先頭から落下、撃たれただけでなく列車に引きずられ、しまいには轢かれてしまうという死にっぷりで、このシーンだけでもうこの映画のノリの全てが分かってしまうほど強烈です。

 脚本というかストーリーはまあパターン通りで特に新味もないのですが、細部にいろいろ面白いアイデアがあって、飽きること無く観ることができます。ライバックがいったん列車から落とされ、車で追いついてまた乗り込むとか、崖にぶら下がってたら、敵が止めを刺しにきたのを逆にやっつけるところとか、なかなか工夫があります。敵の女スナイパーがライバックを狙うのですが、カーブを利用して同じ列車にいる標的を狙撃するという、昔少年ジャンプで連載していた漫画(タイトル失念)にもあったアイデアが使われていて、ちょっと気になりました。まあ偶然なんでしょうけど。

 本当に何も考えずに悪い奴が殺されていくのを、手を叩きながら観るアホっぽい映画なんですが、ここまで徹底してくれると本当に爽快です。セガールのマーシャル・アーツ的なアクションと、ハリウッド製の大仕掛けなアクションがバランスよく融合されていて、これと「沈黙の戦艦」がやっぱりセガール映画の中では特に完成度が高いような気がします(全部観たわけではないんですが)。

 ただラストの正面衝突した列車から走って脱出するのは、物理的にどうしても不可能だろと思ってしまい、このシーンだけはセガールの存在感をもってしても説得力は生み出せなかったと思ってしまいました。でも劇場で観たときは大笑いして観れたので、それも欠点ではなかったりするんですけどね。セガールさんも今はかなり太ってしまったので、もうこのようなアクションはできないというか、そもそもこんな大作に出演されることはないでしょうから、この全盛期の輝きを我々は語り継いでいかねばならないとあらためて思います。いやマジでリアル系アクションと荒唐無稽な大仕掛け大作アクションの融合って、意外に後継者がいないんですよ。どちらかだけに絞ればいますけど。だからやっぱりセガールさんて稀有な存在だったのだなあと今さらながら思いました。

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