ラン・ローラ・ラン

 いつぞや「ザ・バンク 堕ちた巨像」の感想を書きましたが、同じトム・ティクヴァ監督の「ラン・ローラ・ラン」のことも書きたいと思います。ついこの間やってたような気がしてたのですが、早いものでもう20年以上経つのですね。これは渋谷でやっているのを劇場に観に行きました。オープニングからノリノリで映画というよりもPVのような印象を受けました。

 お話はローラが金に困っている恋人を助けるためにとにかく走るというものです。たしか制限時間までに金を用意しないと殺されてしまうとかで、ジャーマンテクノをバックに町を走り回ります。時にはアニメになってみたり、すれ違っただけの人のその後の人生まで見せたりして、水増しというわけではないんですが、単純なお話を飽きさせないように作っています。それでもえらく早くローラが失敗してしまい、どうなるのこれ、と思ったらいきなりリセットですよ。ローラがノー!! と叫ぶと、助けを求める電話がかかってくるところに時が戻ります。確か三回戻ります。

 これけっこう凄いです。オムニバス的に三つの短篇として見せるでもなく、SF的設定を物語に組み込むこともなく、手法からの勢いだけで過去に戻ってるのに、それでも何だか納得させられます。特に三回目のアニメ部分で、いつも痛い目にあってた犬に対してやり返すような感じの行動をとったりとするところでは、かなりのカタルシスを感じます。ここらへんは凄く映画に酔えて気持ちよかったと思います。

 ただCGやアニメや編集でもの凄くノリのいいところはいいんですが、会話が続くようなシーンは、あえてでしょうけどもの凄く普通に撮っていて、退屈というか何かちょっとペース的につんのめるような感じがあります(中盤のラブシーンとか)。でもまあメッセージ的に大事なところだからこういうのも必要なんでしょうね……。

 手法だけのパパッと作ったような映画じゃなくて、ちゃんと根底に愛を感じます。でも観終わると細部は忘れてしまいますね。なんと言うか他の映画も観て思うのは、ティクヴァさんは理屈先行型というか、なんだか語り口に冷めたところがあります。それがいいかどうかは好みでしょうが、この映画に関してはいい方向に働いているのではないでしょうか。

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