もののけ姫

 先日、映画館でジブリの四作品がリバイバル上映されているということもあり、未見だった二作品(「もののけ姫」と「ゲド戦記」)のうち、「もののけ姫」を観に行きました。ジブリ作品、というか宮崎駿監督の映画は大好きなのに、何故「もののけ姫」を公開当時観に行かなかったかというと、いかにも「風の谷のナウシカ」の焼き直しですよ、といった印象があって、まあそれでも観てもよかったんですが、確かあの年は洋画もかなり充実していて、優先順位的にそれほど上位になくて、なんかタイミングを逃して観なかったのですね。

 で、初めての鑑賞はどうだったかというと、もう和製ファンタジーとして最高峰の作品だと感服しました。明確に日本が舞台でありながら、そこかしこに精霊が息づいている美しい架空の世界を構築しています。それでいて現実世界への批評にもなっているという、完成度の高い映画で、それを劇場の大画面と大音響で観られる至福の時間を堪能しました。

 気になっていた「風の谷のナウシカ」の焼き直し感は、それほど感じられず、というか確かに構図は似ているのですが、さらに洗練されているというか、設定と物語が一つの映画として完結するように練り直されている感じがして、むしろ好印象でした。言ってしまいますが、大好きな「風の谷のナウシカ」とはいえ、一つだけ気になる点があって、それはちゃんと完結していないというところで、当時原作が未完だったのでしょうがないのですが、あのラストははぐらかされたような、話をそらされたような、「奇跡が起こって凄いけど、それ何の結論にもなっていないよね?」と言いたくなる感じがありました。今回の「もののけ姫」ではちゃんと結論が出ています。「結論は出せない」という結論ですが、はぐらかすよりは正直ではあります。その点でもあらためてこういったテーマで作る意義があったのだと思いました。

 一つ驚いたのは「もののけ姫」というタイトルでありながら、アシタカが完全に主人公である点で、予告で観ていたあのもののけ姫であるサンがナウシカポジションなのかと思いきや、そんなに前には出てきていません。役割としてはナウシカのキャラクターをサンとアシタカに分割したような感じです。で、アシタカが自らにかかった呪いを何とかしようと旅に出て、たたら場というところに来たとき、そこの人たちと山犬に乗ったサンが争っているところに出くわすのですが(正確には争って谷に落ちた人を助ける)、ここでの争いがかなりガチなことに戸惑いました。もう人死には出ていて、憎しみの連鎖まで起こっています。これアシタカうまく治められるの? と思いました。治められないんですけどね。とは言え、アシタカはよそものという立場を最大限利用して、たたら場と森の二つの陣営のどちらからも大目に見てもらっているというか、普通に話ができる感じになっています。これを堂々とやっているのが凄いです。なかなかこうはいきません。

 中盤はけっこう物語は停滞するのですが、世界観と言いますか、それまでに起こったことや設定を見せつつ、幻想的な映像で作品世界に浸ることができて、このゆったりとした時間感覚も心地よかったですね。いろんなもののけたちが出てきてそれを観ているだけでも楽しかったです。こういうところにアニメとしての表現の豊かさを感じて、ああ映画を観ているなあと実感しました。

 最低限の説明しかないのでわかりにくいのですが、それぞれのキャラクターの抱えているものとかも、ちょっと考えたらいろいろ思い至ることができて、繰り返しの鑑賞に耐えられる作りになっています。こんなに面白いなら、公開当時観ていればよかったとも思ったのですが、その当時の自分にこれを楽しむことができたかどうかはわかりません。むしろこのストーリーの壮大さ、キャラクターたちの生き様、そして生きろという作品全体のメッセージは、全て今の私にこそ響くものであるような気もします。

 そんなわけで、面白かったの一言で済むことをいろいろ理屈をこねてしまいましたが、最後に監督の宮崎駿さんをはじめとして、スタッフ、キャストのみなさん、絵を一枚一枚描いた全てのアニメーターのみなさんにあらためてお礼を言いたいと思います。よい映画を本当にありがとうございました。

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