クリスマス・ツリー

 季節外れも甚だしいのですが、急激に「クリスマス・ツリー」という映画のことを書きたくなったので書きます。監督さんは007シリーズでお馴染みのテレンス・ヤングです。私もリアルタイムで観たわけじゃなくて、大学の授業で観たと思います。英語の教材か何かで。

 お話はお涙頂戴一直線です。現在も繰り返し映画の題材に扱われている難病モノの走りと言ってもいいかも知れません。ウィリアム・ホールデン演ずる父親とその息子。平和に暮らす二人ですが、ある日、米軍の飛行機か人工衛星かが爆発し、その放射線の影響で息子が白血病になってしまいます。辛気くさい闘病モノではありません。余命わずかとなった息子のために父親は財力の限りを尽くして彼を甘やかすことに決めるのです。別れたのか単に出番が少なかったのか忘れましたが、ちゃんと母親もいたと思います。彼女はあまりそれを良く思っていなかったような気がします。例によって記憶があやふやですのですみません。

 今思うとそんな甘やかすのは良くないだろうと言うかも知れませんが、だって死ぬんですよ。死ぬのはもう決まっているのですよ。父親としたらもう何だってやってあげたいじゃないですか。そんなこんなでいろんな贅沢品を買い与えられ、偽りの豊かさに息子はしばし辛い運命を忘れていきます。しかし容態が悪化。息子は何としてもクリスマスまでは生きたいと父親に打ち明けます。

 父親はまた馬鹿ですので、本場のクリスマスツリーやシベリアに住む本物の狼とかを取り寄せます。親バカすぎます。しかしそこが泣かせます。そしてクリスマスが来ます。この映画はそこで終わります。ラストは意外にも大して盛り上げる演出もなく、父親が息子の部屋に入ると、息子が床に静かに横たわっているシーンで終わります。いくらでもここで盛り上げて泣かせようがあるのに、ここだけサラッと描くところがまた素晴しいのです。動かなくなった息子のそばに二頭の狼が寄り添っているのが泣かせます。

 この映画、舐めて観ているとラストで号泣してしまう破壊力の高い映画でして、DVDも出ていますので、そんなに観るのが難しいわけでもないということで、こういったジャンルが嫌いだというのでなければオススメです。

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