【大分トリニータ】2022年夏補強考察

 今回はJリーグ・大分トリニータの今夏の補強戦略についてを個人的考察しようかと思います。7月15日から夏の補強期間がスタートしますが、現在思うような成績を残せていないトリニータ。後半戦の反撃や来季以降も見据えた時に夏の補強は無視出来ないことかと思います。ということで補強ポイントと現実的に補強して欲しいなという選手を記載しようかと思います。大前提として個人の勝手な意見なのでご了承頂けると幸いです。

前半戦のチーム状況整理

 前半21試合を終了した時点で7勝7分7敗の10位。開幕前のチーム活動停止やルヴァンカップとの超過密日程、怪我人続出など仕方ない部分も多々あるが、いずれにしても開幕前の期待とは程遠い現状。
 今季のチームを簡単に整理すると、ポゼッション率はリーグ1位。しかしながらXG(ゴール期待値)はリーグ7位前後を推移しており、プレーエリアの重心がやや後ろであるのもありDFでポールを回す時間が多いのが現状。シュートについては昨年はリーグでも極端に少ないシュート数だったが、今季は中位に位置しており少ないという訳ではない。その他攻撃に関する指標は上位半分に位置する物が多く、特にセットプレーはここ数年ウィークポイントだったのが、得点パターンではチーム最多タイとストロングポイントに変わりつつある。
 では守備はどうか。下平体制では片野坂体制の時よりハイプレスでボールを奪いに行く場面も増えたが、タックルやインターセプトの数値はリーグ平均よりも下位に居ることが多い。ポゼッション率1位というのもあり、そもそもボール奪取の機会が少ないのもあるが、やはりまだまだ片野坂体制を継承している部分は大きい。被シュート数も決定率もそこまで悪い数値ではないのだが、クロスからの失点が全体の4割とサイドからの守備やクロス対応に不安を残す結果ではある。

選手バランスと補強ポイント


 選手については高木・ペレイラ・三竿の3人が基本的に出ずっぱりだが、その他の選手は離脱者の数が多すぎて流動的に起用せざるを得ない状況。CBは前述の2人がほぼ全試合に出場しているが2人共本職のCBではなく、3バックでも4バックでも本職CBを務めるのは坂・上夷と離脱中の刀根ぐらい。まず頭数が足りないポジションである。
 続いて気になるのはボランチ。頭数であればそれなりに居るし、弓場や2種登録の保田など有望株も控えるポジションである。ただ20歳以下の彼らの他には小林裕紀・下田・ネットが30代と、羽田以外に中堅がおらずに世代バランスとしてはやや悪い。
 他に気になるのはサイドでの個のクオリティを確保出来る選手。良くも悪くもサイド偏重からのクロス・折り返しが多いチーム。当然サイドの質は求められるが、そこで勝てる選手も必要ではある。右は井上を中心に稼働率が不安ではあるが増山も存在し、タイプで言えば揃いつつある。一方で左は直近数試合で藤本が台頭してきたものの、3バックを継続するなら本職でWBの選手は確保しておきたい。
 こちらは必須事項ではないが、サムエルの稼働率や伊佐の怪我が思わしくないようであればCFの補強も視野に入ってくる。特に彼らが得意にしている、相手を背負ってキープ出来るタイプは必要だと感じる。長沢は空中戦とクロス対応は上手いが相手を背負ってポストプレーするタイプではないし、呉屋はひたすら駆け引きしてナンボの選手であるだけに、タメを作れるタイプは貴重になる。
 他にも細かい部分を言えばテコ入れが必要な部分はあるが、現状足りない部分はこのような形だと個人的には考察する。以上の点や離脱者の復帰も考慮しつつ、以下のような補強ポイントを挙げたいと思う。

①足元のあるCB(特に左利きであれば望ましい) 優先度:高
②25歳前後のボランチ(攻撃に関与出来るタイプ) 優先度:中
③突破力のあるWB(特に左でプレー出来るタイプ) 優先度:中
④背負ってボールキープ出来るFW 優先度:低

 以上の点を踏まえ、誠に勝手ではあるが個人的に良いと思う選手をヒックアップさせて頂いた。

ポイント1:ビルドアップに長けたCB


 ●知念哲矢


浦和レッズ/1997.11.8(24歳)/178cm/利き足:左/出身:沖縄
2022年成績:J1(2試合出場)/ACL(2試合出場1G)/天皇杯(出場なし)

 まず1人目は浦和の知念哲矢。2021年の前半戦で琉球の躍進に大きく貢献した左利きのCB。琉球や浦和はポゼッション型だっただけに足元に長ける他、楔のパスも得意。本人が特徴と語る対人の強さも兼ね備える。浦和ではここまでリーグ戦は2試合の途中出場のみだが、ACLでは2戦に出場しゴールも決めた。本人が出場機会を望むのであれはアタックする価値のある選手だが、浦和がACLを残しているので手元に残しておきたい部分はあるかもしれない。 

 ●袴田裕太郎


ジュビロ磐田/1996.6.24(26歳)/183cm/利き足:左/出身;静岡
2022年成績:J1(2試合出場)/YLC(4試合出場)/天皇杯(2試合出場)

 続いては磐田の袴田裕太郎。本職は左SBだが3バック時の左CBやWB等マルチにこなす選手。ポジションだけで言えば三竿と被るが、183cmありCBとしても活躍は期待出来る。最大の特徴は左足からのフィードやクロスなどの長短を混ぜたパス精度。そもそも三竿意外にも左利きの左SBなら香川や高畑も存在するが、CBをやれるという意味では狙ってほしい選手。横浜FC時代に下平監督の指導を受けており、戦術の浸透面でも心配は無さそう。大きな障壁になりそうなのは磐田ユース出身のホームグロウン選手なことか。磐田は10人前後対象選手は存在するが…。

 ●中塩大貴


横浜FC/1997.6.8(25歳)/181cm/利き足:左/出身:埼玉
2022年成績:J2(10試合出場)/天皇杯(2試合出場)

 続いては横浜FCの中塩大貴。浦和ユースから立正大を経て甲府へ。翌年には横浜FCに引き抜かれた。最大の特徴は左足のビルドアップ能力。長短共にパスの精度も素晴らしく、上の2人と同様に求める選手層にマッチする人材。短期ではあるが袴田同様に下平監督の指導を受けており、特徴把握や戦術面でもアドバンテージがある。懸念点は横浜FC移籍後は出場機会は少なく試合勘の部分での不安があるのと、同カテゴリーのライバルクラスには移籍させづらい部分か。

 ●鈴木喜丈


水戸ホーリーホック/1998.7.6(24歳)/183cm/利き足:左/出身:東京
2022年成績:J2(21試合出場)/天皇杯(出場なし)

 続いてピックアップするのは水戸の鈴木喜丈。FC東京ユース出身でJ3のU-23時代にはトリニータとの対戦にも2試合共に出場。水戸で才能が開花し今季から完全移籍。元々はボランチが本職だがCBにコンバートされてブレイクした経緯からも分かるように、足元の技術に長けた左利きで求める人材にマッチする。水戸ではDFリーダーとしても成長中で精神的な部分も期待出来る。今季はターンオーバーの試合以外は全試合出場中で懸念点はやはり同カテゴリーの不動の主力であること。チーム順位もほぼ同じチームに移籍するの可能性は低いだろうが、それでも狙う価値のある選手であると思う。

 ●堂鼻起暉


福島ユナイテッドFC/1998.12.5(23歳)/177cm/利き足:右/出身:大阪
2022年成績:J3(12試合出場)/天皇杯(2試合出場)※県予選含まず

 最後にピックアップするのはJ3から福島の堂鼻。神戸ユースからびわこ成蹊スポーツ大を経てプロ2年目。主にCBと中心としてボランチでもプレー出来る選手で、今回ピックアップしたCBの選手では唯一の右利きの選手。ただ今季の福島では主に3バックの左を担当しており、特に本職が三竿ぐらいな左CBは任せられる選手。J3でのポゼッション率が高い福島でビルドアップや楔のパスも持ち味とするため、こちらも求める人材にはマッチするのではと思う。

ポイント2:25歳前後のボランチ

 ●松本泰志


サンフレッチェ広島/1998.8.22(23歳)/180cm/利き足:右/出身:埼玉
2022年成績:J1(8試合出場)/YLC(5試合出場)/天皇杯(1試合出場2G)

 ボランチでまずピックアップするのは広島の松本泰志。1試合に12~13km走る運動量と機を見た鋭い縦バスが持ち味のプレーメーカー。2019年の前半戦にポジションを掴みかけるが後半以降はパッとせず。福岡やセレッソへのレンタルを繰り返し今季が6年目。今季の広島のボランチは野津田が良いパフォーマンスを見せており出場機会には恵まれていない。同じ広島所属だった丸谷拓也氏のパターンもあり、狙っても面白い選手。

 ●重廣卓也


アビスパ福岡/1995.5.5(27歳)/178cm/利き足:右/出身;広島
2022年成績:J1(2試合出場)/YLC(3試合出場)/天皇杯(1試合出場)

 続いては福岡の重廣卓也。2020年に前とのコンビで福岡のJ1昇格に大きく貢献してボランチ。元々は敏捷性とパスセンスに優れた攻撃的な選手だったが、福岡のソリッドなスタイルに合わせて運動量やポール奪取能力も向上した。しかし今季はよりロングバスに持ち味のある中村がレギュラーに君臨し満足な出場機会は得られていない状況。下平監督の当初の構想である4-3-3を復活させるなら特に適した人材ではないかと思う。

 ●千布一輝


テゲバジャーロ宮崎/1995.7.13(27歳)/178cm/利き足:右/出身:広島
2022年成績:J3(14試合出場)

 ボランチで最後にピックアップするのは宮崎の千布一輝。長短織り交ぜたパスセンスと危機察知能力で宮崎の心臓部分を担うボランチ。今季の宮崎は4-3-3を採用しているが、そのアンカーとして”全てのパスは千布を経由する"というぐらいに攻撃を司っている選手。経歴としてはヴェルスパ大分に在籍経験があり、大分のことを熟知しているのも大きなポイント。今季全試合にフル出場中であり獲得は容易ではないのがネックか。

ポイント3:個で勝負出来るWB

 ●長沼洋一


サンフレッチェ広島/1997.4.14(25歳)/178cm/利き足:右/出身:山梨
2022年成績:J1(2試合出場)/YLC(3試合出場)/天皇杯(1試合出場)

 WBの1人目は広島の長沼洋一。左右どちらでもプレー可能なサイドプレイヤーで、スピードを活かしたドリブルが魅力の生粋のドリブラーだが昨年はシャドーでプレーする場面もあった。得点力では劣るが、かつて在籍していた田中達也を思わせる部分がある。今季の広島では右では藤井が絶対的な存在になっており、左はベテランの柏が主にレギュラーとして出場しており、出場機会という面では声を掛けてみても面白い選手。

 ●荒木翔


ヴァンフォーレ甲府/1995.8.25(26歳)/166cm/利き足:左/出身:神奈川
2022年成績:J2(16試合出場)/天皇杯(2試合出場)

 WBの2人目は甲府の荒木翔。甲府を代表する左利きのサイドプレイヤー。インテリジェンス性としなやかさを兼ね備えたエレガントなプレーが持ち味で、昨年の甲府では全試合に出場した絶対的な選手。ただ今年は小林の台頭等もあり途中出場も増えている。今オフにJ1クラブからのオファーも受けた中での残留を選択したとも言われており、シーズン途中に同カテゴリー間移籍というのは可能性としてはかなり低い方だとは思うが、狙ってみる価値はある。

 ●近藤高虎


FC今治/1997.9.28(24歳)/163cm/利き足:右/出身:愛媛
2022年成績:J3(14試合出場3ゴール)/天皇杯(1試合出場)

 WBのラスト3人目は今治の近藤高虎。163cmの小柄な身体を持ち味に変え、ボールを持ったら積極的にガンガン仕掛けて行くドリブラー。今季の今治では4-3-3の左ウイングとしてレギュラー出場中。縦への仕掛けもカットインもあり、相手DFとしては非常に厄介な存在。主にウイングではあるがSBの経験もあり、WBでのプレーも問題ないだろう。獲得に対して難しい面があるとすれば地元の今治出身の選手なこと。今治としても簡単に放出することはないだろう。

ポイント4:ボールキープに優れるFW

 ●知念慶


川崎フロンターレ/1995.3.17(27歳)/177cm/利き足:右/出身:沖縄
2022年成績:J1(16試合出場3G)/ACL(6試合出場3G)/天皇杯(1試合出場1G)

 CFの最初は川崎の知念慶。2020年にレンタルで在籍していたのでお馴染みの選手ではある。当時はゴール数では3と伸び悩んだが、空中戦でも地上戦でもボールを収める技術や競り勝つ勝率はかなり高かった。時間を作れるFWという意味ではかなり適した選手。今季は主に途中出場が多いがほぼ毎試合に起用されており、獲得は難しい。ただ川崎にはレアンドロ・ダミアンという絶対的存在が君臨する中、そろそろ地に足を付けたいのではとも思う。

 ●ディサロ燦シルヴァーノ


清水エスパルス/1996.4.2(26歳)/175cm/利き足:左/出身:東京
2022年成績:J1(3試合出場)/YLC(1試合出場)/天皇杯(2試合出場3G)

 続いては清水のディサロ。最大の特徴はエリア内での豊富なシュートパターンという典型的なCFで呉屋タイプだが、身長の割に背負ってキープするのも巧みな選手。北九州に加入し2年目にJ2で大ブレイクし清水移籍を勝ち取ったが、大型補強の影響もあり1年半でレギュラーを掴むには至らず。先の天皇杯ではハットトリックを記録するなど力は確かだけに勿体無くは感じる。実は法政大学時代にトリニータの練習に参加したことがあり、縁は感じる選手。

番外編

 その他、これから記載する2名の選手については年齢や年俸の部分で全く現実的ではないが、取ったら夢のある選手なので記載します。完全に個人の趣味ではありますし、実現することは無いとは思いますが…。

 ●金崎夢生


名古屋グランパス/1989.2.16(33歳)/182cm/利き足:右/出身:三重
2022年成績:J1(7試合出場)/YLC(5試合出場1G)/天皇杯(1試合出場)

 1人目は名古屋の金崎夢生。ご存知高卒でトリニータに入団し、2008年のナビスコ杯優勝にも貢献し黄金期を知る選手。当時は技巧派のトップ下だったが、海外挑戦を機に全く異なるプレースタイルに変貌。時にエゴイスティックなまでのCFになり、ポールキープが巧みな選手になった。名古屋・鹿島ではJ1優勝に貢献しており勝者のメンタリティを注入出来る選手。今季はスタメン僅か2試合のみと長谷川監督からはあまり評価されていないのか出番は多くない。無論、梅崎の時と比べると年俸も高く現実的に獲得が目指せる選手ではないが…。

 ●長澤和輝


名古屋グランパス/1991.12.16(30歳)/172cm/利き足:右/出身:千葉
2022年成績:J1(4試合出場)/YLC(4試合出場)/天皇杯(出場なし)

 続いても名古屋グランパスから長澤和輝。大学から直接ドイツに渡った後、千葉へのレンタルを経て浦和ではACL制覇に大きく貢献し、現在は名古屋でプレー。元々持っていた非凡な攻撃センスにACLで球際の強さが開花。闘えるボランチとして頭角を表したが、今季は先発出場なしで専らカップ戦要員。5月以降試合出場なしなので怪我の可能性は高そうだが、試合に出られていないのは確か。また専修大学出身ということもあり、下田北斗とは同級生で町田也真人は2学年先輩の選手。弓場や保田らに既存の選手とはまた違ったお手本を見せられる。もちろん年俸的にも縁の部分でも大分に関連性はなく、それこそ専修大の繋がりぐらいしか無いが。

終わりに

 今回は大分トリニータの夏の途中補強について書きました。開幕前に思い描いた理想と現状に乖離があるのは多くの人がそうではないかと思う。兎にも角にも過密日程と、そこから来る怪我人が続出しすぎているのが大きい(この執筆中にもペレイラと羽田が離脱…)ので、保有選手や戦力自体は悪くない。ただ特にCBに関しては頭数から少なくなっているので最低限の駒を揃えないと、酷使→怪我→別の選手を酷使…という負のループに陥るので誰かしら獲る必要はあるように思える。
 その他のセクション、特にFWと上の番外編の4名は現実的でもないし優先度も高くないと思うが、どのポジションも今年の補強では将来も見据えた補強が必要だとは思う。つまり今年のJ1昇格だけの為の補強は必要ないのでは…とは思う。
 いずれにせよ今年のチームは補強ありきなチーム体制ではないと思うし、怪我人の復帰を待つという形でも良いと思う。但しあと一歩の部分や仮に今季昇格を逃したとしても来季に繋がる形での補強はあって良いのではと思う。


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