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Beyond Beer クラフトビールのこれからを考えるヒント

先日アメリカでCraft Beer Conferenceが開催されました。そこでは醸造技術や原料だけでなくBeyond Beer(ビヨンドビール)の話題も出たそうです。

私はかつてよりビヨンドビールに注目しており、2021年11月に一冊の本にまとめて発表しました。その一部を本文でも取り上げているサントリーのビアボールに絡めて東洋経済オンラインにも寄稿しました

その当時、まだビヨンドビールは全く認知されておらず、「は?ビヨンドビール???」という感じでしたが、そろそろ意識しないではいられない状況かと思います。書籍は完売してしまったので、今回Noteにて発表します。これを読んで頂ければビヨンドビールとは何であるのか、今何故注目しておくべきなのかがご理解頂けるのではないかと思っております。

クラフトビール界隈は本当にアグレッシブでスピーディなので、3年も経たずにブランド勢力図に変化が生まれています。本文中で例として挙げているブランドにも無くなってしまったものがありますが、概念や潮流、本文での論点には影響しないと考えています。その点予めご了承ください。なお、無くなっているものにはその旨付記してあります。

Beyond Beer クラフトビールのこれからを考えるヒント

はじめに なにやら世界は騒がしい

近年世界的に流行を見せ、ここ日本でもクラフトビールが人気です。アメリカでのブームを受け、日本でもかつて地ビールと言われたものが2010年代前半からクラフトビールへとその名を変化させ、徐々に浸透し始めました。ここ数年、大手ビール会社もクラフトビールと称する商品を多数投入してきており、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで見かけることが増えました。

世界の大手ビール会社は多数のクラフトブルワリーを買収し、その傘下に収めてきました。それは今なお続いていて、シーンはアグレッシブに動いています。ビールというジャンルは今非常に熱い。

その一方で、世界を見渡すと大手ビール会社はそれ以外の分野にも積極的に手を伸ばしていて、お酒というジャンル全体を巻き込んだ大きなムーブメントへと移行しつつあります。そしてそれはここ日本も同じで、あまり語られていませんがすでにその潮流に巻き込まれているのです。それが”Beyond Beer”(ビヨンドビール)です。今世界はビヨンドビールを巡ってなにやらとても騒がしい。

本書では世界最大のビール会社であるAnheuser-Busch InBev(アンハイザーブッシュインベブ)の近年の活動を出発点にビヨンドビールをキーワードとしてビールとその周辺領域の動きを確認します。そして、世界、主にアメリカと日本の状況を比較し日本の特殊性や強さ、弱さなどについて考えます。

大きな流れを記述することで個別のジャンルの立ち位置がまた浮き彫りになるように思います。どんなものでもその特性から得手不得手があり、マーケットや社会の環境が変わればそれに合わせるべく変化していくものです。ビヨンドビールおよびそれを支える変化の流れを受けてお酒と消費者の関係が再構築もしくは再認識され、それに伴って非大手の事業者も行動を変革していくことでしょう。ビヨンドビールをそういったミクロな活動に外側から影響を与えるものとして捉えると既存の現象に新たな文脈を形成できるような気がします。

私はクラフトビールに注目することが多く、以前から事あるごとに「クラフトビールはクロスオーバーだ」と語ってきました。それをそろそろ更新する時期に来たのかもしれません。概ね同じ意味ではありますが、これからは「クラフトビールはBeyond “Beyond Beer”(ビヨンドビヨンドビール、ビヨンドビールの更に先にあるもの)に向かっている」と言い換えるべきなのでしょう。

ビヨンドビールはまだ動き出したばかりのものです。しかし、確実に進行していくと目されています。本書がビールならびにクラフトビールを愛する方々はもちろん、お酒を愛するあらゆる方々にビヨンドビールを知るきっか
け、そしてお酒のあり方を捉え直すヒントとなればこの上ない幸せです。

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