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「女の子はどう生きるか」 第4章 その4

上野千鶴子著、「女の子はどう生きるか- 教えて上野先生!」(岩波ジュニア新書)の要旨。女子高生の質問に、日本の女性学のパイオニアである、上野千鶴子氏(東大名誉教授)が答えるという、Q&Aの形式で綴られた書。

Q.44 女を増やすと何が起きる?男女共同参画はなんのため?

Q.日本のジェンダーギャップランキングはどんどん下がって、政府は指導的立場にいる女性の割合を増やそうと画策中。女性を増やすのはなんのため?どんないいことがあるのか?

A. GDPは世界3位で、男女平等ランキングでは121位、国は豊かなのに女性は不釣り合いに差別されている。

国連からの夫婦別姓ができない状況を改善せよ、との勧告も無視。女性国会議員数も増えない。それぞれの理由は上記したとおり。(第4章その1、Q36の章へ。)

男女共同参画の公式の英訳名称はgender equality、つまり男女平等。なのに、男女共同参画と政府が名前をつけたせいで、平等という意義が薄れ、政府の「平等」を強調したくないという意図を感じる。

女子を増やす理由は何か?いままで排除されてきた、女性という存在を取り込むことで新しい視点が生まれる。革新が起きる。女性向けの分野に男性が入ってもイノベーションが起きるように、政治、経済、様々な分野で既存のシステムにノイズを持ち込むことに意義がある。

何のための男女平等か?女性に意思決定権があるのはとても大事だ。男女平等とは、女も男のように強者になりたいという思想ではなく、弱者のまま安心安全に生きることのできるための思想だ。

いつか、「女の子が差別される時代があったんだ、信じられない」といわれる時が来ることを祈っている。

二〇一九(平成三一)年度東京大学学部入学式祝辞

原文へのリンクあり

 ・女子学生の置かれている現実

東京医科大不正入試問題の発覚、女子と浪人生の合格のさせ方に差別があった。文科省による大学医学部の調査で女子学生の合格率に対する男子学生の合格率は平均1.2倍男子学生優位の学部は医学部以外に見当たらず、理工系も文系も女子が優位の場合が多い。

他学部では1倍を切るこの数字が、医学部では超えていることには何らかの説明が必要だ。統計は大事だ。それを元に考察が成り立つ。

女子受験生の偏差値の方が男子受験生より高いことの証明データがある(note筆者:文部科学省はセンター試験男女別偏差値などは公表していない模様。不都合だからかな。民間サイトにはそれらしきものがある。)。しかし、東大の女性比率は2割を超えない。四大進学率も男子55%、女子48%。偏差値に男女差はないので、この差は成績ではなく、大人による性差別の結果。

ノーベル平和賞受賞のマララさんが女子教育の必要性を訴えたが、日本には関係がないことか?マララさんのお父さんが折らないようにしてきた。他方、多くの場合「娘の翼」は折られてきた

東大の女子が入会できず、他大の女子のみに参加を認める東大のサークルがあるが、それは平等の理念に反する。このように隠れた性差別は横行していて。東大もその例の一つ。教授職は女性が7.8%で今までに歴代総長はいない。

 ・女性学のパイオニアとして

女性学、ジェンダー研究はこのようなことを研究するために40年前に生まれた。その原動力は、飽くことなき好奇心と、社会の不公平に対する怒り。学問にも衰退と勃興があり、女性学は時代の変化がそれを求めたから生まれた。

 ・変化と多様性に開かれた大学

東大は変化と多様性に開かれた大学で、様々な教授がいる。素晴らしい環境で学ぶことができる。そんな東大に入ってきて頑張れば報われると思っていても、公平に報われない社会がそこにある。

頑張れば報われると思えること自体が、環境のおかげであることを忘れないように。そしてその頑張りを自分のためだけでなく、恵まれない人を助けるために使おう。

フェミニズム弱者が弱者のまま尊重されることを求める思想である。

 ・東大で学ぶ価値

待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不能な世界。正解のない問いに満ちた世界。学内に多様性が必要な理由は、新しい価値とは、異文化が摩擦するところに生まれるからだ。異文化を恐れずに、未知の世界へ飛び出していくこと。

大学で学ぶ価値は、すでにある知を身に着けることでなく、これまでに誰も見たことのない知を生み出すための知を身につけることだと確信している。

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