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「いぱぴ」ってなに?

娘がカタコト話せるようになった頃、突然発せられたひとこと。


「いぱぴ食べたい」


その日からわたしの頭に「いぱぴ」が住み着いた。

生まれてからそれまで、頭の中がなんだかわからないもので埋め尽くされたことはない。いや、それから今までもたぶんない。

「いぱぴ」「いぱぴ」…あらゆる努力はした。

「色は?」「形は?」娘にしつこく聞くと怒りだす。


「いぱぴ」「いぱぴ」…。

掃除をしてても、洗濯をしてても「いぱぴ」がいる。


「いぱぴ」「いぱぴ」…。

娘を買い物につれて行くことにした。

「いぱぴ」あったら教えてね。

…そこにはなかった。


「いぱぴ」「いぱぴ」…。何日かたった。

「ママ、この前作ってくれたっしょ」お、有力情報。そいつはわたしが作ったらしい。何だ?わたしは何を作ったんだ?

「いぱぴ」「いぱぴ」…。さっぱりわからん。



そしてそれは突然やってきた。そういう時は突然やってくる。

「いぱぴ」が住み着いてから1週間後、いつものようにお昼ごはん。


「わー!やったぁ!いぱぴだー!!」


喜ぶ娘の前には「スパゲティ」があった。

答えは「スパゲティ」だった。それからしばらくの間、うちでは「いぱぴ」と呼んでいた。


よかった。

さようなら、わたしの頭の中の「いぱぴ」。


20年以上たったけど、でもやっぱり忘れられないや。ふふふ。





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